タレク・エル・アイサミ副大統領の指示で2008年から2012年の間に173枚のベネズエラのパスポートが発行されていたというのが調査で判明しているという。その対象になったのは中東出身の人物で、その中にはレバノンのテロ組織ヒズボラのグループもいたそうだ。それを在イランのベネズエラ大使館の書記官だったミサエル・ロペスが2013年から2015年の間に調査して、パスポートとビザが売買されていたことを告発したのである。それが理由で彼は解雇されるという結果になった。
彼の証言によると、ビザまたはパスポートが最高1万5000ドル(180万円)を払って手に入れていたそうだ。ベネズエラのパスポートはEUの26カ国を含め世界130か国でビザなしで入国できる。(参照:「
Infobae」)
2002年にチャベス政権を打倒すべくクーデターを起こした時、その一員だったマルコ・フェレイラ元将軍はチャベス政権時からパスポートの売買が行われていたと明らかにした。2001年から2002年にかけてフェレイラは彼が就いていた職務ポストから高官が無記名のパスポートを発行していたのを目撃していたそうだ。その経験から「ベネズエラ人になることや、ベネズエラで生まれたことにすることは大変容易なことだ」と言って米国のCNNの取材に答えたそうだ。
CIAが懸念しているのは、ベネズエラから彼らが北上して米国に入国してテロ活動を開始することである。
米州機構(OAS)の米国ロジャー・ノリエガ大使によると、アラブ人でベネズエラのパスポートを所持している者がチリ、パナマ、コロンビアなどの空港でスペイン語を喋べれないことが発覚して摘発された例もすでにあるそうだ。
<文/白石和幸 photo from
kremlin.ru (CC BY-SA 4.0) >
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。