読者は既にお気づきのとおり、スクリーンと話し手は基本的には同じ方向に立つということが、聞き手の集中度の低下を小さくするために効果的だ。スクリーンを背にして話し手が立つということが、基本的な立ち位置だ。
スクリーンを背にして話し手が立つ場合には、話し手にはターンのスキルが必要となる。ターンのスキルとは、レーザーポインタなどでスクリーンを指して、かつ、聞き手の方を向きながら話すために必要なスキルだ。
ターンのスキルも分解すれば、体得して、実践しやすくなる。聞き手の方を向いて話す(ハナス)。話すのをやめて、スクリーンに向かってターンする(ターン)、スクリーンをレーザーポインタで示す(シメス)、聞き手に向かってターンする(ターン)という分解行動だ。私はこれらを、頭文字をとって、
「ハタシタ」のスキルと呼んでいる。
この「ハタシタ」のスキル、大事なことは、
ターンする時は話をしない、話をしている時は聞き手に向かい合い、ターンをしないということだ。慣れるまでは、話をしないことに抵抗感や不安を覚えたりするものだが、話をしないことで、間をつくることができ、聞き手を引き付ける度合を高めることができる。
そして、ターンをするときは目だけや顔だけを動かすのではなく腰から体の軸毎にターンするということが大事だ。演習をしていると、目だけ動いていて、聞き手に奇妙な目つきと思われてしまうケース、首だけ動いて違和感を覚えさせるケースなどが多発する。
腰から体の軸毎ターンをするという動作は、意外と難しい。頭ではわかっていても、体で再現しづらい動作のひとつだ。何度も実際に体を動かしてみて体得することをお勧めする。これは反復演習しないとなかなか身に付かないが、反復演習すれば、たいがい身に付く。
この動作を反復演習すると、日頃の立ち居振る舞いも生き生きとしてスマートになる。相手を引き付ける動作の分解スキルは、腰から体の軸毎ターンするスキルであると言える。
演習している時は、極端に大きな動きで腰からターンをするくらいの動作を繰り返すことで、スマートなターンの動きを体得することができるのでお試しいただきたい。
【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第57回】
<文/山口博>
【山口 博(やまぐち・ひろし)】グローバルトレーニングトレーナー。モチベーションファクター株式会社代表取締役。国内外企業の人材開発・人事部長歴任後、PwC/KPMGコンサルティング各ディレクターを経て、現職。近著に『
チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月)、『
クライアントを惹き付けるモチベーションファクター・トレーニング』(きんざい、2017年8月)がある。