中国の宇宙ステーションが地球に落ちてくる?「正しく恐れる」ために大切なこと

鳥嶋真也

今年の年末から来年初めごろに地球に落下すると考えられている中国の宇宙ステーション「天宮一号」の想像図 Image Credit: CMS

「制御不能に陥った中国の宇宙ステーションが地球に落ちてくる」――。そんな話が昨年ごろからたびたびささやかれ、つい最近も英国のメディアなどが報じ、そのたびに話題になっている。

 その多くで、「制御不能でどこに落ちるかわからない」、「燃え残った部品が降り注ぐかもしれない」といった、危機感を煽るような内容が散見された。

 実際には、明日にでも頭の上に降ってくることを心配するようなものではない。しかし、この中国の宇宙ステーションに限らず、大きな人工衛星をどう処分するかをめぐっては大きな課題があることも事実である。

中国の宇宙ステーション「天宮一号」

 今回「落ちてくる」と話題になっているのは、中国が2011年に打ち上げた小型の宇宙ステーション「天宮一号」である。

 中国は近い将来に、大型の宇宙ステーションの建造を目指しており、天宮一号はそのために必要な技術の開発や、試験を目的として打ち上げられた。

 まずは無人の状態で運用され、機能の確認などが行われた後、2012年に3人の宇宙飛行士が乗った宇宙船「神舟九号」がドッキング。天宮一号の中に飛行士が入り、1週間あまりにわたって宇宙滞在の試験や宇宙実験などが行われた。2013年には「神舟十号」もドッキングし、3人の飛行士が2週間ほど滞在している。

 天宮一号を使った試験はこれをもって終了となり、2016年には改良型の「天宮二号」が打ち上げられ、2人の飛行士が訪れて30日ほど滞在。2017年10月現在は無人での運用試験が続いている。

 また天宮を改造した、「天舟一号」という無人の貨物補給船も開発され、今年の4月に打ち上げられて天宮二号にドッキング。燃料の補給など、将来の宇宙ステーションの運用に向けて、必要な技術の試験を行っている。

 現在のところ、中国の本格的な宇宙ステーションの打ち上げは2018年以降に予定されている。そしてこれまでのところ、その実現に向けた準備は順調に整いつつあるのは間違いない。

 ところが、その歩みにとって少しばかり汚点となりかねない出来事が起きた。天宮一号が”制御不能”に陥ったのである。

天宮一号の中に入った神舟九号の宇宙飛行士たち。左から、景海鵬飛行士、劉洋飛行士、劉旺飛行士 (C) CMS

制御不能になった天宮一号

 2016年3月、中国の国営メディアなどが、「天宮一号からのデータ送信が終わった」と報じた。このとき、文言のニュアンスがやや曖昧で(英語メディアへ転載される際の翻訳の問題などもあった)、運用者が意図して機能を止めたのか、それともトラブルで止まったのかはわからなかった。しかし、のちに出てきた情報で後者、すなわち故障だったことが明らかになった。おそらくはバッテリーが故障し、電力を失ったものと考えられる。

 このトラブル以降、天宮一号からのデータも届かず、地上からの指令も届かない、”制御不能”の状態に陥っている。

 ただ、この制御不能という言葉は、間違いではないものの、やや誤解を招くものである。アニメのロボットのように、暴走して制御できないというようなものではなく、実際にはうんともすんとも言わない、ただの”塊”となっているにすぎない。

 天宮一号は現在、高度約300kmを少し超えたあたりの軌道を回っている。高度300kmというと十分に宇宙と呼べる場所ではあるものの、ごくわずかに大気があるので、その抵抗を受け、少しずつ少しずつ高度を落としている。今後、やがてある限界を超えると、高度がぐんぐん落ち、そしていわゆる「大気圏再突入」の状態になり、燃えながら地上に向かって落下することになる。

 これを大げさに捉えたいくつかのメディアが、地球のどこかに宇宙ステーションが落下するなどといった、やや危機感を煽るような報じ方をしているのである。

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地上に落下する可能性は?

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