団体ツアーでは要注意! タイで起きた「店員のふり」詐欺が単純だけどヤバイ

 タイは多民族であることと、地方性が強いことからタイ語の方言は外国語と同じくらい発音や単語そのものが違う。そのため、必ずしも共通語としてのタイ語を流暢に話す人ばかりではない。また、先にも述べたように手の込んだ詐欺はタイ人はあまりしない傾向もあり、本人を目の前にしているウェイトレスや、カスタマーサービスでトラブル処理の経験も豊富な佐野さんから見ても、タイ人だとは断定できないそうだ。

タイの大衆食堂。左下の黄色い女性のように制服を着ていれば問題ないが、中には制服のない飲食店もあるので注意が必要だ(※写真の店と本文は関係ありません)

 どの段階で紛れ込んだのかわからないが、タイでは飲食店のマネージャークラスになるとワイシャツとスラックス程度で制服を着ていないことが多く、いつの間にか当たり前のように給仕してくれていれば誰だって勘違いしてしまう。客側としては最初からすべてを疑ってかからない限り見抜くことはできない。普通、そんな警戒心を持って飲食店に入る人だっていないだろう。言われてみれば簡単な奪われ方だが、当の本人たちが気づくはずはなかった。

観光ツアーのスキを突いた詐欺

「最終的に、素性のわからない人物を間に立たせて注文を取っていた店側に安全管理上の問題点があるということを落としどころにして、食事代は払わず(客からしたらすでに払っているが)、飲みものの代金だけ払って解決ということになりました」  確かに、そんなトラブルが起こっているにも関わらず店の上司ではなく佐野さんに助けを求めるウェイトレスの対応を見ても、店側の管理意識に問題はある。とはいっても、あまりにも堂々と入ってこられたら誰だって勘違いをしてしまい、こういった案件はこれからも起こりうる。解決方法はなにかないだろうか。またこういった詐欺は今度も起こるだろうか。 「防ぎようがないのですよね。あるとすれば、店員の写真を撮っておくなどするくらいでしょうか。ただ、頻繁に起こる事件とも思えないです。なぜなら、犯人側にリスクが高いと見るからです。客か店側にちょっと違和感があればすぐにバレてしまいますし、今は店内に防犯カメラがあるのは当たり前ですからね」

タイは小さな店でも防犯カメラをつけるようになっている。本気を出せば、それらの防犯カメラを繋ぎ合わせて犯人の足取りを辿ることはできるそうだが……

 実際にこの店では所轄の警察署にカメラの映像と共に被害届を出すということをのちに佐野さんに話したそうだ。ブラックジャック詐欺などの古典詐欺も含め、前知識があればある程度防ぐこともできる。そういった考えもあり、今回佐野さんはこの件に対して取材に応じてくださった。  タイでは個室利用はVIPのような扱いを受けることもあるが、マネージャーなどがつきっきりになるということはまず考えられない。お調子者の変な人物がいたら警戒するようにしたい。 <取材・文・撮影/高田胤臣(Twitter ID:@NatureNENEAM)>
(Twitter ID:@NatureNENEAM) たかだたねおみ●タイ在住のライター。最新刊に『亜細亜熱帯怪談』(高田胤臣著・丸山ゴンザレス監修・晶文社)がある。他に『バンコクアソビ』(イースト・プレス)など
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