プミポン・タイ国王の葬儀で見た「影響力と人気」

マハタート

バンコク有数の寺院「ワット・プラ・シー・マハタート」には、献花に訪れた参列者が寺院の外まであふれていた

 タイ国民に深く敬愛されたプミポン国王が2016年10月13日に崩御してから一年。タイ国内では10月25~29日の5日間にかけて、国葬の儀式が執り行われた。  国王の火葬式である本葬儀の26日は朝から儀式が続き、この模様は国内テレビ局各局でも生中継された。

900の主要寺院で、1700万人もの人々がプミポン国王を追悼

献花

ボランティアの的確な誘導により、グループに分かれて整列する参列者。暑い中でも誰ひとり文句を言うこともなく、静かに献花の時を待っていた

 王宮広場に造営された火葬の儀のための施設「プラ・メルマーツ」周辺にはタイ国内外より約20万人が詰めかけたほか、国内に存在する約900の主要寺院においても一般参列による献花が行われ、一年の喪に服したタイ国民たちや世界中から訪れた約1700万人もの人々が、プミポン国王を追悼した。  そんな中、記者が献花に訪れたのはドンムアン空港よりほど近い「ワット・プラ・シー・マハタート」というバンコク市内でも有数の寺院だ。火葬式をテレビ中継で見終えた後に出向いたのだが、すでに寺院の外にまで行列ができるほどの喪服のタイ国民であふれかえっていて、プミポン国王の絶大なる影響力と人気をうかがわせた。  献花台が設けてある祭壇にたどり着くまでにはまず整理券をもらい、グループ分けされた列に並んで待機する必要がある。同寺院には約3万人を超える参列者が訪れていたのだが、ボランティアたちの取りさばきにより特に大きな混乱は見られず列は配備され、参列者たちは静かに献花の時を待った。  途中、僧侶の読経などの儀式のため2時間ほど献花は中断したが、待機中にはボランティアたちが冷たい水やおしぼり、タイラーメンやお菓子などを配布していた。これらは「王様からのおぼしめし」という名目上で、すべて無料で提供されたものである。

献花台にたどり着くまでに4時間超!

 献花が再開し始めたころには日もどっぷり暮れ、少しずつではあるが列も動き出した模様。乾季にさしかかり多少涼しさはあるものの、喪服を着ているとさすがに暑い。献花台にたどり着くまでには列に並び始めてから実に4時間を超えていた。  献花台には国王の肖像画とともに大きな祭壇が設けられており、「ドクマイ・ジャン」と呼ばれる装花をたむける。祭壇の前に立つと、係員が「気をつけ! 花を置け! 礼! 」とまるで軍隊のごとく号令をかける。花をたむけたら即退場しろ、とのことで情緒にひたる時間もなかったのが残念だった。
次のページ
参列者には日本人の姿も
1
2
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会