制服に対する日本人の珍妙な価値観「警察や消防団員はカフェで甘いコーヒーを飲んではいけない、ブラックは可」

橋本愛喜

制服のままカフェでくつろぐニューヨークの警官

 以前日本で、制服姿の消防団員が消防車でうどん屋に立ち寄ったとのニュースが話題を呼んだ。

 市民から「消防車がうどん店にあった。おかしくないか」とのクレームが寄せられ、消防本部が分団長に口頭注意をしたというのだが、これに「税金で走る消防車で食事に行くべきではない」、「制服でうどん屋は非常識だ」といったクレームに賛同する声が上がる一方、「食事ぐらいいいじゃないか」「腹ごしらえも立派な仕事だ」と、そのクレームや注意の妥当性を疑問視する意見が思いのほか多く上がったのが印象的だった。

 では、もし休憩中の制服警官や消防士がうどん屋ではなく、カフェで“お茶”をしていたら、どうだろうか。

 筆者が滞在しているアメリカでは、昼食はもちろん、パトカーを路肩に停め、お腰のモノとは全くもって不釣り合いな“スイーツ系コーヒー”でひと息入れる制服警官をよく目にする。また、健康管理のために署内で自炊することの多い消防士が、スーパーの列に“出動時”の格好で並んでいるのもよく見る光景だ。

 こうした制服を着た公務員の“入店風景”は、たとえそれが休憩時間であっても、現在の日本ではほとんど見られないが、アメリカではむしろ、制服警官に食事を提供しなかったラーメン店の従業員が解雇されたり、警察労働組合が商品の販売を拒否したドーナッツ店に対してボイコットしたりしたことがニュースになる。

 今回、筆者が日本とアメリカの「制服警官の行動の許容範囲」に対する意見を募ったところ、日本人129人のうち、8割に当たる104人が「食事はいいのでは」と答えた。

 しかし、やはり「カフェでのお茶」には9割近い116人が「違和感がある」と回答。「サボっているように見える」「拳銃を携帯している時に気を緩めてほしくない」という意見が並ぶ中、「レギュラーコーヒーはいいが、スイーツ系のコーヒーは疑問」といった声もあった。

 さらに、「公園のベンチで制服警官が自前の弁当を食べていたら」との質問には、日本人43人中39人が「気になる」とし、「公園の場合だと水を飲んでいるだけでも気になる」という意見も出た。

 これらの結果をアメリカに住む外国人68人に示したところ、「日本の警察は制服を着ている間は外で休憩できないのか」「署にパトカーを置き、私服に着替えてカフェに行くなど、効率が悪すぎる」「日本の礼儀作法は美しいが、時々美しすぎることがある」「ヒーローだって人間だ」など、7割を超える51人が日本人の意見を異にする一方、日本を訪れたことのある一部の外国人からは、「日本の質の高さはこうして生まれているのでは」と、日本人の見解に理解を示す声もあった。

 以上の結果に鑑みると、前出の「消防団員のうどん屋入店」で出たクレームの発生要因には、「税金使用」以外にも、日本人の抱く「制服に対する印象」が大きく関わっていることが分かる。

 実際、警察関係者数名にこれら制服に関する話を聞いてみたところ、こうした一般市民からの声が多い昨今、やはり制服で食事に行くことは自粛するように通達されているという。もし行くならば、制服が見えぬよう、ジャケットなどを羽織らなければならないとのこと。ただし、「犯罪抑止になる」と店側からも歓迎されるため、コンビニへの制服入店は許可されていることが多いそうだ。

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制服は「プライド」と見るアメリカ人、「自制の象徴」と見る日本人

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