ホテル業界の情報によると、高級ホテルでは予約が20%ほど減少したという。さらにこれから数か月先の予約におけるインパクトは8月のテロの時よりも大きいと予測されている。
比較的安価なB&Bホテルズのハイロ・ゴンサレス社長も、「旅行者は楽しく過ごす為に訪問するのであって、混乱の中に巻き込まれるのを恐れている」と否定的な見解だ。「街で起きていることに観光者は敏感だ」と指摘し、「予約のキャンセルが発生している。また将来の予約についても冷めた状態にある」と述べた。そして、「先日の日曜(10月1日)から雪だるま現象が始まった」と述べて、将来キャンセルが更に増加することを懸念している。
同様に、世界でトップレベルの部屋数を持つメリアグループのアルフォンソ・デル・ポーヨ副社長は「カタルーニャには11軒のホテルを持っているが、既に目立つ需要の減少が見られるようになっている」と指摘し、「予約キャンセルの中には深刻な事態を招くものもある」と述べて不安を表面した。彼によれば、他のホテル経営者も同様の状態にあるそうだ。
また、一般住宅を観光者の宿泊先として提供するアパルタメントも、この先数週間の予約が40%減少しているという。(参照:「
La Vanguardia」)
更に、カタルーニャで開催される国際会議が独立問題で減少する可能性があるということも懸念されている。(参照:「
El Mundo」)
エネルギー・観光・デジタル大臣のアルバロ・ナダルは「カタルーニャの観光業の成長に急ブレーキがかけられた」と指摘している。(参照:「
Libre Mercado」)
企業はカタルーニャから去って行く。観光業者そして観光者もカタルーニャを敬遠するようになっている。1992年のバルセロナ・オリンピックを切っ掛けに世界的に知名度を高め、発展したバルセロナ。しかし、ここに来て25年間の発展の為の努力が、現実経済を無視した一部政治家の独立したいという気まぐれのせいで一気に崩れ落ちようとしている。
<文/白石和幸>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。