また商品自体は良いが、生産力や販売力に劣る国内の中小企業の商品を優遇する。
パク社長は、これらの商品をお客さんの目が届きやすいところに陳列する。
「商品を供給してくれる企業に利益が生まれれば、より良い商品を持ってきてくれる」というのがパク社長の考え方。20年来の取引業者が、丘岩文具に多数いるのも彼の自慢だ。
「丘岩文具」の本店に訪れる客は、一日に1200~2400人。本店よりも多少規模は小さいが2階~3階のビルで4店舗の支店も市内に出している。従業員数は全社で70余人だ。
パク社長は、来年には新たな支店を出す計画だ。中小文具店が、大型フランチャイズ店の波に飲まれている業界事情をよく知っている人たちは、だからこそパク社長の手腕に賛辞を惜しまない。
新しい支店の所在地は、繁華街とはほど遠い。しかしパク社長は「利益だけを考えるのなら、違う場所に店を出した方が良い。でも蔚山市民の皆さんに与えてもらったものは、ちゃんと返さないといけない。だからチャレンジかも知れないが、住民の皆さんが不便に思っている地域に店を出す」と言う。
地域社会に利益を還元する、地域共生経営こそが「丘岩文具」の競争力だ。お客さんに喜んでもらうために、文具店のポイントでコーヒーが飲めるカフェも作った。市民にくつろいでもらうために、屋上庭園も造ったし、若者たちの休憩所も設置した。「丘岩文具」は、地域の学生たちが流通業界について学ぶための職業体験施設でもある。
パク社長は、蔚山大学校や社会福祉共同募金会、初・中・高等学校、無料給食所、低所得層家庭などへの寄付活動にも積極的だ。今までの寄付総額だけで7億ウォン~8億ウォンになる。海外の子ども達への文具の寄贈も行っている。パク社長は、そのすべては「義務」だと言う。
パク社長は、幼い時分に母を亡くし、小学校をやっとの思いで卒業した。その後は、日雇い労働やアルバイトをしながら生計を立てた。文具店の店員として働いていた経験を活かし、「丘岩文具」を創業する。
「自分の覚悟を変えないため」に、『丘の上の岩』という店名にしたという。
「ここ5年は売り上げが停滞気味ではあるが、投資を続け、必ず突破口を開く」。
これが、今のパク社長の覚悟だという。
(出典:
中央日報)
<文・安達 夕
@yuu_adachi>