同様に七宝山ホテルも閉鎖の憂き目を見るのだろうか。七宝山ホテルは故金正日総書記の肝いりでリニューアルが進められ同氏死去後の2012年にリニューアルオープンしている。平壌で外国人が宿泊する特級ホテル「高麗ホテル」や「羊角島ホテル」よりきれいでしかも安いのだ。記者は3つすべて泊まっているが、本国よりも中国にある七宝山ホテルの方が規模こそ小さくも高級感あるホテルだったりするのだ。
高麗航空のオフィスがある七宝山ホテル1階
このホテルの行く末について瀋陽の朝鮮族経営者は、「多分、七宝山ホテルは潰れないでしょう」と話す。その理由として、ホテルで働くスタッフの9割は中国人で、ホテルを廃業するメリットが中国側には一切なく、中国人たちの職を奪うことで地元の瀋陽政府や中央政府への不満となることは避けたいと考えているからだという。
七宝山ホテル2階のレストランで働くスタッフの多くは中国人
「北朝鮮レストランは大幅に減るかもしれません。閉店しても中国経済への影響は小さく、不満も起きないからです。残るとしたら高級人材としてビザを特別に出すなどこっそりと例外項目を設けるかもしれませんね」(同)
中国政府は外国人労働者を業種や業務内容、年齢、年収などを加点方式でランク付けしているが、北レススタッフを芸能や特別技術者扱いにして実質的な就労ビザ更新や新規取得を認めるのかもしれない。あまり知られていないが、中国には、芸術家や演奏者向けのビザ(芸能ビザ=Aビザ)という特殊なビザが存在する。基準は中国政府の気分次第なのでどうにでもなりそうだ。
七宝山ホテル前には北朝鮮と中国の国旗、七宝山ホテルの3つの旗が並ぶ
ただ、七宝山ホテル存続にも課題が残されている。中国側の運営会社が以前、本サイトで取り上げた女性経営者の馬暁紅氏が率いる「遼寧鴻祥実業集団」なのだ。同氏は、北朝鮮との密貿易が疑われ昨年9月に拘束されたままとされる。(参照:「
北朝鮮の大同江ビール、中国へ独占輸入していた企業は北の核開発協力にも関与していた」)
アメリカが名指しで制裁対象にしているような人物、会社なので、鴻祥から別会社へ売却されて七宝山ホテルは存続するという道を辿るのかもしれない。
いずれにしても北朝鮮の中国での外貨獲得環境は日に日に厳しさを増していることは事実だろう。
<取材・文・撮影/中野鷹(TwitterID=
@you_nakano2017)