フィンテックの競争激化はこれからが本番。じぶん銀行社長が語る「生き残りの条件」とは?

HBO取材班
 金融(ファイナンス)とIT(テクノロジー)を融合したフィンテックという言葉が広まって、数年が経過した。とはいえ、言葉の広がりとは裏腹に、いまだにフィンテックがなんなのか理解しきっていない人も少なくないだろう。

 話題の仮想通貨やそれに伴うサービスはもちろん、数多くあるネット決済サービスや、古くからあるネットバンキングもフィンテック領域である。

「日本ではフィンテックが流行り言葉になっていますが、グローバルでは必ずしもそうではない。本質的には、金融機関のビジネスモデルの変革です。クラウドサービスやAIの発展に伴い、お金の流れだけじゃなくお客様の行動も変化していて、さらに規制緩和で銀行が従来業務以外のサービスに投資しやすくなっている。加えて、アマゾンやアップルなどこれまではテックジャイアンツとされてきた他ジャンルの企業も参入してきた。銀行にとって従来のビジネスモデルが成り立たなくなったのと同時に、フィンテックの波がやってきたとみるべきでしょう」

 そう話すのはネットバンク・じぶん銀行の社長に今年6月から就任している柏木英一氏だ。じぶん銀行は三菱東京UFJ銀行とKDDIが共同出資する会社で、柏木氏はもともと、三菱東京UFJ銀行でIT分野の業務に長く携わってきた人物だ。

じぶん銀行社長・柏木氏

じぶん銀行社長・柏木氏

 じぶん銀行はスマホに特化したネットバンクで、まだフィンテックという言葉もなかった2008年に設立。インターネットバンキングはもちろん、スマホをキャッシュカード代わりにできる「スマホATM」や、来店なしで完結する住宅ローンの提供なども行っている。

 そんな同行のトップに就任した柏木氏は、世界的にみてもまだまだフィンテックに伸びしろが大いに残されていると考えている。

「決済をはじめ、フィンテックではさまざまなサービスが出てきていますが、まだまだフリクション(摩擦)が多いと思っていて。バークレイズの元CEOのジェンキンス氏が話していましたが『ウーバーモーメントはまだ金融に来ていない』と。タクシーを呼ぶウーバーほどのユーザーフレンドリーなサービスにはできていないということです」

 そういった観点から、じぶん銀行はユーザー視点で使いやすいサービスを追求してきた。住宅ローン提供では開始から2年弱で2000億円超の借り入れを実現しているが、従来の来店して何度も契約書を確認して……という煩わしさをなくすため、すべてスマホで完結できるようにしている。

「もちろん、ウチが店舗をもたない銀行だからそうなるのは当然なんですが(笑)」と話す柏木氏。ただ、さまざまなサービスを提供する中で日本特有の障害を感じているようだ。

「日本の特殊性は2つあって、まずはオンラインバンキングの利用率が低いこと。もう一つはキャッシュレス化の比率も低いことです。これはATMの数が多くて十分使い勝手がいいこともあるし、財布にお金を入れていても盗難の危険性が低いことも関係している。あとはなるべく金銭のやり取りを匿名でやりたいという国民性もあると思うのですが、どちらにせよ、各種統計で欧米はもちろん、アジア諸国に比べても日本は遅れている結果が出ています」

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打ち出された実験的施策

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