日本の人工衛星「しきさい」がまもなく宇宙へ! 気候変動の謎を解き、地球の未来を守れ

「しきさい」の模型

「しきさい」の模型。宇宙空間ではこのような姿で飛ぶ

高性能センサーを積んだ気候変動観測衛星「しきさい」

「しきさい」は縦・横それぞれ約2.5m、高さは約5mで、ワンボックスカーをひとまわり大きくしたくらい。質量は約2トンある。  最大の特長は、衛星の前部(写真では上部)にある「多波長光学放射計」と呼ばれる高性能な観測装置で、この装置を使って地球を観測する。JAXAと日本電気(NEC)が開発したこの装置は、多数の波長(色)を使って地球を観測することができる。他国にも似たような装置を積んだ衛星はあるものの、「しきさい」のものはとくに分解能(細かく見る能力)に長けているという。 「しきさい」はこの装置を使うことで、たとえば海面のどこの温度が何度なのか、どのような植物がどの程度生い茂っているのか、雲やエアロゾルがどこにどれだけあるのかといったことを精密に調べる。  また、装置にはさまざまな工夫が施されており、たとえば地面を真上と斜めの両方から観測することができるので、真上から見ることでわかる「植生で覆われている面積」だけでなく、斜めから見て初めてわかる「その植生がどれだけの高さをもっているのか(たとえば水田なのか森林なのか)」といった、多くのデータを得ることができる。これにより地球環境のさまざまな姿を見通すことができると期待されている。  開発費は打ち上げ費用を含めて322億円。打ち上げは今年度中に、種子島宇宙センターから行われる予定となっている。  打ち上げ後、「しきさい」は地球の上空約800kmを南北に回る軌道に乗る。この軌道は約2日ごと同じ地点の上空に戻ってくる、つまり地球の全体をくまなく観測することができるようになっているので、観測を続けることで地球全体のデータをどんどん蓄積することができる。観測期間は約5年が予定されている。
「しきさい」の前の世代の衛星が撮影

「しきさい」の前の世代の衛星が撮影したサンフランシスコ沖の様子。 海洋の濃緑になっている部分は植物プランクトンが多い海域、明るい白い領域は雲で、細い筋状の雲は飛行機雲と推測される。「しきさい」ではこれよりさらに詳細に見ることができる Image Credit: JAXA

黄砂や漁業にもいかせる「しきさい」のデータ

「しきさい」のデータは、気候変動という地球や人類の未来にかかわる問題の観測だけでなく、より私たちにとって身近な、たとえば黄砂の飛来状況や、赤潮の発生状況の把握にも使うことができる。とくに筆者のような、毎年花粉症シーズンに泣きっ面に蜂のように襲いかかる黄砂に苦しめられている人にとっては、とても助かることこの上ない。  さらに、「しきさい」が調べる海面温度と、海洋植物プランクトンの発生状況は、気候変動の予測だけでなく、漁業にも役立つ。魚の分布と海面温度は密接にかかわっており、プランクトンは言うまでもなく魚にとっての餌になる。つまり両者のデータがあれば、魚が集まる場所が推測でき漁獲量が増やせるほか、さらにそこへ漁船は直行できるようになれば、船の燃料費の節約にもなる。  これまで、沖合や遠洋漁業の分野では衛星のデータが使われていたものの、陸地と海とを明確に分けて観測できる「しきさい」なら沿岸漁業でも使えるため、その利用は大きく拡大すると考えられている。  こうしたデータは、日本周辺であれば準リアルタイムで提供できるとのことで、気象庁や漁業情報サービスセンターへのデータ提供・配信の準備を進めているという。
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「しきさい」に続く衛星の計画がまだない
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