JR宇都宮駅東口に掲げられた「LRTがまちを変える!」と書かれた看板。全国初の新設LRT「宇都宮ライトレール」の着工はもうすぐだ。
北関東最大の都市・宇都宮市の交通体系が大きく変わろうとしている。
近く、市内を東西に貫くLRTの新規着工が予定されている同市で9月2日に行われた「LRTの早期着工を目指す市民大会」には、定員の1,600人を遥かに超える約3,000人の参加者が集結。登壇した佐藤栄一宇都宮市長は「郷ひろみのコンサートでもここまで集まることは無かった」と感服するほどだった。
これほどの数の市民が会場に押し寄せたのは「LRTの早期着工」を願う声がそれだけ大きいということにほかならないのだが、宇都宮市でそれほどまでにLRTの開業を急ぐ声が大きいのには、いくつかの理由があった。
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一方、市民大会の会場外ではLRT計画に反対する市民団体の抗議活動が展開されていた。市議会野党はLRT計画に反対しており、反対運動は政党間のイデオロギー争いと化しつつある。
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9月2日、宇都宮市で行われた「LRTの早期着工を目指す市民大会」のようす。大会では有識者などがLRT整備の意義を市民に訴えた。
さて、ここで今一度、宇都宮市に新たに導入される「LRT」とは何かを再確認しよう。
「LRT」とは「ライトレールトランジット」(Light Rail Transit)の略で、平たくいえば「高性能な軽鉄道(路面電車など)を用いた交通」のこと。バスと比較して省エネで、高頻度の大量輸送が可能なうえ、騒音・振動が少ない超低床車両(LRV、Light Rail Vehicle)の導入などによりバリアフリーにも配慮されており、誰もが使いやすいことが強みだ。
欧米各国では、かつてモータリゼーションにより廃止された路面電車をLRTとして復活させたり、既存の路面電車の車両をLRVへと置き換えるケースが多く、近年は中国や台湾でもこうした例が見られるようになった。
日本ではJR富山港線を改装、LRT路線へと転換した富山ライトレールや既存の路線にLRVを導入した広島電鉄宮島線などが一般的にライトレールとして認識されている。
フランス・リヨンでは1957年に廃止された路面電車をLRTとして2001年に復活させた。ヨーロッパ諸国ではライトレールの導入が非常に進んでおり、LRT整備とともに中心商業地への車両流入規制が行われる事例も。
しかし、今回の宇都宮は富山や広島などと大きく異なり、導入の母体となる路線が存在していない。つまり、宇都宮ライトレールは線路も何もないところに一からLRTを新設する「日本初のプロジェクト」なのだ。
宇都宮ライトレールでは、線路を宇都宮市と東側に隣接する芳賀町が整備・保有し、運営は関東自動車や東武鉄道などが出資する第三セクター企業が担う「上下分離方式」を採用。
路線は宇都宮市の東西を貫くように約18kmに亘って敷設される。そのうちJR宇都宮駅東口から宇都宮市の東隣・芳賀町の本田技研北門までの東側区間(約15km)を優先整備区間とし、東側区間は2017年度中の着工、2022年3月の開業を目指している。その後、JR宇都宮駅から東武宇都宮駅附近の中心市街地へと向かう西側区間(約3km)を延伸する計画だ。