元祖レッドブル創始者の孫、国際指名手配に。変化を見せ始めたタイの警察体質

高田胤臣

「レッドブル」の元になった「グラティンデーン」

「レッドブル」の元になった「グラティンデーン」。イメージアップのために新しいデザインと若者向けの成分などを打ち出しているが、あまり売れていなさそうだ。右端は「レッドブル」で、こちらもタイで買える

 9月14日に「タイのレッドブル創始者の孫 国際指名手配」のニュースが流れた。2012年に警察官をひき殺し、その後保釈されたきり警察や裁判には一切出頭せず、タイ警察が国際刑事警察機構(ICPO)を通して国際指名手配をかけたものだ。
ICPOのホームページ

ICPOのホームページで確認できるウォラユット・ユーウィタヤー容疑者の手配写真

 海外でも報道され、このニュース内容だけ受け取れば「逃亡していればそうなるよ」という事件と思うにすぎない。しかし、この指名手配はタイが国としてこれまでの体質を少しは改善しようという兆しであるかもしれないこと、もしくは現在の軍政下におけるタイ警察のポーズでしかない出来事としてタイ人は捉えている。

B級映画のような大富豪御曹司の事故と隠蔽工作

 そもそもこの事件は2012年9月4日の報道で一般タイ人にも知られることになった。

『3日午前5時30分ごろ、バンコク都内スクムビット通りのソイ47付近で、バイクでパトロール中の男性警官(48)が黒いフェラーリのスポーツカーにはねられ、約200メートル引きずられて死亡した。フェラーリは現場から走り去った。』(参照:「newsclip.be」)

事故が起こったスクムビット通り

事故が起こったスクムビット通りソイ47付近は日本人居住者も少なくない。

 このひき逃げ犯が今回国際指名手配されたウォラユット・ユーウィタヤー容疑者で、レッドブル創始者のチャリアウ・ユーウィタヤー氏の孫になる。チャリアウ・ユーウィタヤー氏が死去した2012年の経済誌「フォーブス」では、ユーウィタヤー家の資産は54億ドルで、当時タイ4位、世界では205位だとされる。要するに大富豪である。
 事故は百歩譲って、動転してしまい現場から走り去ったのだとしても、そのあとがあまりにもひどかった。自宅まで逃げ帰ったウォラユット容疑者は使用人を容疑者に仕立て上げるもすぐにバレてしまう。

 しかし、警護も厳重で、管轄警察署の警官たちはユーウィタヤー邸に入ることすらできず、最終的に警察司令官まで登場し、マスコミと警察官の前で「捕まえられなかったら辞職する」と宣言。喝采を浴びた。しかし、その後使用人を犯人に仕立て上げることに管轄警察署の幹部が関わっていたことが明るみになり、幹部らは異動処分となっている。安っぽいアクション映画のような展開だった。

 その後、観念したウォラユット容疑者は容疑を認めたが、保釈金50万バーツを払って自由の身になり、以降、自家用機などで世界中を飛び回って警察も手が出せない状況になっていた。

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レッドブルに買収されて大富豪に
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