救急車が150メートル走っただけで6万円の請求! “一寸先は地獄”のアメリカ保険事情

橋本愛喜

筆者がアメリカで支払った医療費の明細。日本に比べると法外な値段が並ぶ

 海外へ渡航した際、日本で保険を掛けてきたか否かは、時に異国での身の上を大きく左右する。こと医療費が高い国への渡航においては、なおさらだ。

 筆者は2年前の渡米直前、大きな過ちを犯した。長期滞在の予定だったにも関わらず、日本で海外保険に加入していかなかったのだ。

 いわずもがな、アメリカは自他ともに認める「超高額医療費大国」だ。「盲腸になって車を売った」と言っても誰も驚かない。それどころか、「よかったわね、家は残って」と、日本では皮肉にもならない言葉が真顔で返ってくる。アメリカで生じる自己破産の原因の60%は医療費で、そのうちの約80%は、民間の医療保険に加入済みだと言われているほど、治療には莫大なカネがかかるのだ。

 筆者は以前、実にしょうもない理由からニューヨークの救急車に世話になったことがあるのだが、あの車に乗っただけで、600ドル(約66,000円)もの請求がきた。当時の日本-ニューヨーク間の往復航空券の金額と大差ない料金を、当時の自宅から病院の距離、たった150メートルのために支払ったことを考えると、それこそ本当に病気になりそうになる。

 今回の渡米で、保険を掛けていかなかったのには、理由があった。

 7年前に1度目のニューヨーク滞在をした際は、日本出国前に長期滞在者用の海外保険に加入していったのだが、それが御守りの役目を果たしたのか、大きな病気になることはなく、先の「救急車騒動」以外、現地の医療に世話になることもなかった。支払った保険金額は、年間約20万円。不本意で乗った救急車の乗車費用600ドルは相殺できたものの、若かった筆者は、当時この保険を心の底から「無駄だ」と後悔したのだ。

 こうした背景のもと、2年前に再渡米してきたわけなのだが、やはり「保険」は最大の「御守り」なのだろう。前回紹介したように、筆者は渡米1か月目にして、現地で円形脱毛症を発見することになる。

円形脱毛症の治療費は一回5万円、総額110万円

 円形脱毛症は、発症する原因が多岐にわたるため、橋本病と診断されるまでに長い時間を要した。その間いくつもの病院を訪ね歩き、その度に検査を受けたりしたことで、アメリカでの診療だけで、実に総額10,000ドル(約110万円)の医療費がかかったのだ。

 その内訳はこうだ。

 円形脱毛症を発症した当初、橋本病を疑いもしなかった筆者は、まずは皮膚科で患部にステロイド注射を打ってもらっていた。週に1回、約3か月にも及んだその治療費は500ドル(約55,000円)。これは3か月間の合計ではない。1回の治療でかかる費用である。総額にすると、9,000ドル(約100万円)にものぼる。

 この治療の間、家庭の事情で一度日本へ戻った際、某大学病院の皮膚科で「念のために」と勧められて血液検査を受けたことで、初めて甲状腺に何らかの異常があると判明したのだが、その後の精密検査や治療を日本でする時間がなかった筆者は、結果をアメリカに持ち帰り、前出のニューヨークの皮膚科に通いながら、甲状腺専門の病院で再度の血液検査と治療をすることとなった。

 その専門病院でかかった初診費用は149ドル。これについては次回詳しく述べるが、ここアメリカでこのような良心的な金額で済んだのは、当時の状況を担当医師に話し、「なるべく金はかけたくない」と力説したことで、費用を100ドルほど下げてもらえたためである。

 その後2回目のカウンセリングで251ドル、血液検査代に276ドル、1か月分の薬代が10ドル~18ドル。今後もこことの付き合いは続くが、甲状腺の病院で現在までに支払った治療費は、約900ドル(約10万円)ほどになる。

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クレジットカード付帯の海外旅行保険に救われる

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