橋本病にニューヨークで罹患した筆者の闘病記。きっかけは10か所以上の円形脱毛だった

 歌手の研ナオコが10年前橋本病に罹患し、現在も治療中であることを告白したが、筆者も同じ病で苦しんだことがある。

 今から2年前、ニューヨークに2度目の本格上陸を果たして1か月が過ぎた、ある寒い日のことだ。

 病気で倒れた父の工場を引き継いで10年あまり。大学卒業直後から何度も諦めたニューヨークでの生活を、こうして始められる喜びに浮足立ちながら、新居を探すべく不動産屋へ向かっていた。

 地下鉄を降り、マンハッタン34丁目の大通りを歩き始めた時、ふと後頭部に違和感を覚えた。毎冬より強めの冷たい風を感じたのだ。マフラーをしているのに、はて、どうしたもんかと気に留めながらも、先を急ぐ。

 到着したビルのエントランスで名前を告げ、エレベーターホールに向かうと、そこは「ホレ、確認してみろ」と言わんばかりの全面鏡張り。箱が降りてくるのを待っている間に、持っていた手鏡を使って後頭部を見たところ、そこには信じられないものがあった。いや、なかった。

 見事にまん丸なハゲがあり、つまるところ、毛がなかったのだ。

 不動産屋の話が、両耳から後ろの“穴”へとダダ漏れてゆき、全く頭に残らない。その後、一目散に帰った当時の仮住まいで、他にハゲがないか確認したところ、右側頭部にも10円玉ハゲを発見した。

 漫画の中でしか見たことがないその鏡越しの穴を、それでも発見当時はまだ野次馬のような感覚で客観的にとらえており、「オイシイ」とSNSでネタにする余裕さえあった。時期が時期なら、「このハゲー」に「何だと?誰だと思ってんだ、橋本さんだぞ」くらいなノリで振り返りもしただろう。「4.5216㎠」。小学校で習った「円の面積の求め方」が、実生活で初めて役に立った瞬間でもあった。

 筆者が正式に医者から病名を告げられるまでには、実に長い道のりがあったのだが、結論から言うと、筆者は「橋本病」だった。そう、橋本(筆者の名前)が、橋本病になったわけだ。

 読者の中にも最近、突然体重が増加したり、寒がりになったりしたと感じたことはないだろうか。疲れやすく、何をするにもやる気が出ない日々を過ごしていないだろうか。もしかするとそれは、橋本病からくるものかもしれない。発症しても「歳のせいだ」と気付かないまま生活していることも多い、この橋本病。今回から数回に分けて、筆者の体験を元にどういう病気なのかを紹介していくので、心当たりのある人は、是非参考にしてみてほしい。

女性の10人に一人がかかると言われる橋本病とは

 橋本病とは、別名「慢性甲状腺炎」とも言われる、喉下にある「甲状腺」という臓器の特異性自己免疫疾患の1つで、免疫機能が甲状腺を敵だと思い込み、攻撃・破壊してしまう病気である。

 甲状腺は、全身の新陳代謝をつかさどる「甲状腺ホルモン」を分泌しているのだが、これがその攻撃・破壊によって不足すると、甲状腺機能低下症に陥り、「人間活動」に多大な影響を与える。余談だが、この甲状腺ホルモンは、ほ乳類や両生類などの動物ほぼ全てに必要なもので、例えば、オタマジャクシにこの甲状腺ホルモンが不足した場合、カエルになることができないと言われるほど重要な役割を果たす。

 甲状腺ホルモンは、多ければいいというものでもない。多すぎると今度は「バセドウ病」という病を発症してしまう。

 このバセドウ病は、過去に複数の有名人が発症を告白したこともあり、病名を耳にしたことがある人も多いだろう。新陳代謝が必要以上に活発になり、疲れやすく、いくら食べても痩せていくのがその主たる症状だが、橋本病はその真逆だ。

 代表的な症状には、次のようなものがある。新陳代謝の低下、脱力感、鬱(うつ)、冷え性、首の腫れ、体温の低下、しわがれ声、むくみ、汗をかきにくくなる、脱毛、記憶力の低下、乾燥肌、ろれつが回らない、体重増加、生理不順などだ。

 都道府県によっては難病指定している地域もあるが、この橋本病は決して珍しい病気ではない。成人女性の10人に1人、成人男性の40人に1人が橋本病であると言われている。にも関わらず、それほど聞き慣れない病気なのは、患者の8割以上が30~40代の女性であることから、症状が出ても「老化現象や更年期のせいだろう」と見逃されることが非常に多いためだ。ゆえに、人間ドックや健康診断の際に首の腫れや血液検査の結果を指摘されて初めて気付く、というのが発見の王道パターンとなっている。

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