8月24日付『朝日新聞』より
『朝日新聞』が8月24日付の朝刊1面に、「書店ゼロの街、2割超 420市町村・行政区」という記事を載せた。取次(本の問屋)のトーハンが市町村や東京23区、政令指定都市の区部など1896自治体・行政区を集計したものがデータの出所だ。
記事によれば、書店のない街のほとんどが町村部であるものの、市部でも北海道赤平市、茨城県つくばみらい市、徳島県三好市、熊本県合志市など7市に及んでいると報じている。
2割以上の自治体・行政区に書店がないというのは衝撃的だ。だが、書店経営者にとっても利用者にとっても、より厳しい現実があるのではないだろうか。
1995年成立の地方分権一括法が促進した、いわゆる「平成の大合併」がピークを迎えたのは、いまから10年ほど前の2005~2006年だった。2000年末に3229あった市町村は、2006年4月には1820に減少。2016年10月10日現在では1718(政令指定都市の行政区を除く)になっている。2000年時点と現在を比べると、53.2%と半減近い数だ。
『朝日新聞』に掲載された“書店空白自治体”の数をよくよく見ると、上位は北海道、長野、福島、沖縄と続く。市町村合併が進まなかった地域だ。一方、無書店自治体がゼロの香川や1つだけの石川や大分は、市町村合併の進んだ県であった。
⇒【資料】はコチラ https://hbol.jp/?attachment_id=149919
実態をわかりやすくするために、書店のない自治体数の上位と下位の道県をピックアップし、2000年と2016年時点の自治体数と自治体の減少率を比較してみた。
市町村合併が大きく進まなかった県でも、栃木や滋賀のように、無書店自治体が少ないという例外はあるものの、おおむね合併が進展した地域は、見かけ上、書店が充実しているという印象となる。
だが、仮に2000年時点の市町村の区分で現在の書店の営業状況を見たならば、書店のない地域は2割どころか、3割以上あるいは4割近くに達しているのではないだろうか。
たとえ無書店自治体の少ない県だったとしても、広大な面積に1店しかなく、その書店に行くにもクルマで何十分もかかるというような、事実上の無書店地帯は全国に広がっている。そもそも過疎地や島嶼は人口が少なく、書店が営業できる基盤そのものがない。
かつては商圏人口7000~8000人で書店1軒が成り立つと言われていたものだが、いまや人口1万人でも存立基盤としては心もとないのが現状だ。
書店のない自治体が少ないからといって、お客の購買環境が整っているのかと言えば、決してそうとは言えない。市町村合併によって書店を利用しづらい地域の存在が見えなくなっているのは間違いないだろう。