これら一連の報道を観察していると、中国も北朝鮮に警戒するというより、やはりホンネのところはアメリカ一国のみに強い関心を払っていることが感じ取れる。
もう1つ官製メディアの報道からにじみて出ているのは、中国人をアメリカや日本へ行かせたくないという中国政府の意思も感じられるように思えてならない。
というのも、2015年に海外旅行者が1億人を突破した中国だが、これでも全国民における出国者の割合は約7パーセントに過ぎず、今後まだまだ増えていくことは間違いない。
これまで中間層のガス抜きに海外旅行を活用してきた中国だが、高度成長が終わり中成長時代へ移行し、中国共産党の求心力低下が課題となる中で、中央政府への不満分子となりかねない海外渡航者を減らしたいというホンネがあるのかもしれない。カナダやニュージランドへの移住者も増加しており中国政府は頭を抱えているのだ。
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世界中で同じような光景が見られるようになってきた中国人の旅行団
特に、今年4月15日に「THAAD」配備を理由に韓国への団体旅行を全面禁止にし現在も継続されているという背景もある。『聯合ニュース』によると、訪韓する中国人は昨年比65パーセントほど減少しているという。2016年に、韓国を訪れた中国人の数は、全訪韓外国人の半分以上となる約800万人だ。しかし、仮にこのまま2017年が昨年比6割減となれば、単純計算で500万人近くの中国人が渡航先を他の国や地域へ振り替えることになる。
2016年グアム島を訪れた中国人は約2万6000人で前年比11パーセント増だ(環球時報より)。韓国へ行けなくなった中国人の代替地がグアムを含むアメリカや日本になるくらいなら低リスクな北朝鮮へ行ってもらいたいというのが中国政府の希望なのかもしれない。
<取材・文・写真/中野 鷹>