日本人は“恐怖”の表情を正しく認識できない!? 治安の良さゆえの傾向か

問2

問2 次の表情はそれぞれどんな感情を意味していると思いますか?

自分自身が恐怖を感じたことが少ないと、相手の恐怖表情も読み取れない

 次は問2についてです。最初に答えを書きます。Aが恐怖で、Bが驚きです。恐怖表情は驚き表情同様に、眉が引き上げられ、目が見開き、口が開かれます。しかし恐怖表情は、これらの動きに加え、緊張が加わります。具体的に言えば、眉が中央に引き寄せられ(眉間にしわが表れます)、下まぶたに力が入り、口にも力が入ります。

 実は私たち日本人は、恐怖を驚きと誤読してしまう傾向にあることがわかっています。一方、アメリカ人は恐怖を正しく恐怖と認識することが出来ます。

 これはなぜでしょうか? 一説によると、日本人は、自国が安全な社会のゆえに、自分が恐怖表情になる機会や他人の恐怖表情を観る機会が少なく、恐怖表情を認識する能力が低下してしまったのではないかと考えられています。

 恐怖に対する感覚が鈍いと言えるのかも知れません。確かに、日本で大きな破裂音が「バンッ!」と鳴ったら、恐怖の表情をする人は少なく驚きの表情をして「何だろう?」とその音の発生源を探すと思います。しかしアメリカ人ならば、恐怖の表情をして身を屈めたり、物陰に隠れようとします。音の発生源を探す行動をとる人は少ないでしょう。

 自分が恐怖を感じるという感覚をスルドクするのも大切ですが、他人の恐怖表情を観て、すぐに行動できる感覚も同様に大切です。例えば、目の前の人が恐怖表情をしてあなたの後ろを観ているとします。その人の恐怖表情を正しく読みとることが出来れば、身を守ったり、すぐに逃げる行動がとれます。しかし驚きと誤読したら、「ん?何だろう?」とゆっくりした動きで後ろを振り返るかも知れません。車が追突してくるような状況だったらもう手遅れです。Aの写真をよく見て、恐怖表情に対する反応度を敏感にしましょう。

 相手の表情を正しく読むことは思いやりにもつながりますし、自分が適切な行動をとるための助けにもなります。自分の行動の帰結は、ときに相手の表情の中にあるのです。

※本画像の権利は、株式会社空気を読むを科学する研究所に帰属します。無断転載を禁じます。

参考文献
Ekman, P. (1985). Telling lies. New York: Norton.
Matsumoto, D. (1992). American-Japanese cultural differences in the recognition of universal facial expressions. Journal of Cross-Cultural Psychology, 23, 72-84.
M.Yuki, W.W.Maddux, and T.Masuda, “Are the Windows to the Soul the Same in the East and West? Cultural Differences in Using the Eyes and Mouth as Cues to Recognize Emotions in Japan and the United States,” Journal of Experimental Social Psychology 43(2006): 303-11)

【清水建二】
株式会社空気を読むを科学する研究所代表取締役・防衛省講師。1982年、東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、東京大学大学院でメディア論やコミュニケーション論を学ぶ。学際情報学修士。日本国内にいる数少ない認定FACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)コーダーの一人。微表情読解に関する各種資格も保持している。20歳のときに巻き込まれた狂言誘拐事件をきっかけにウソや人の心の中に関心を持つ。現在、公官庁や企業で研修やコンサルタント活動を精力的に行っている。また、ニュースやバラエティー番組で政治家や芸能人の心理分析をしたり、刑事ドラマ(「科捜研の女 シーズン16」)の監修をしたりと、メディア出演の実績も多数ある。著書に『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』(フォレスト出版)、『0.2秒のホンネ 微表情を見抜く技術』(飛鳥新社)がある。術』飛鳥新社がある。

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