ASNARO-2の合成開口レーダーで得られる画像の一例(シミュレーション画像)。火山活動や土砂崩れといった災害の情報収集のほか、環境監視や資源探査など、さまざまな社会課題に活用が可能 Image Credit: NEC
これまで日本の宇宙開発は、高い技術力をもちながらも、産業化や国際競争力といった面では遅れていたため、国や官公庁、企業をあげての巻き返しが図られている。昨年秋には民間企業が宇宙事業に参入しやすくなるような環境や制度を設ける「宇宙活動法」と「衛星リモートセンシング法」が成立。またASNAROの開発には、経済産業省が積極的に支援している。
ASNARO-1と2のうち、ASNARO-1はすでに2014年に打ち上げられており、これまで順調に運用が続いている。ASNARO-2はやや開発に遅れは生じたものの、ようやく完成し、今年中に打ち上げられる予定となっている。光学センサーを積んだASNARO-1と、合成開口レーダーを積んだASNARO-2が出揃ったことで、海外市場への参入の準備が整うことになる。
そして現在、ヴェトナムへの輸出に向けた動きも行われており、ほぼ決まりつつある。ヴェトナムはまさに前述したような、衛星を利用したいものの技術をもっていない新興国のひとつであり、NECや経済産業省はASNAROの製造と打ち上げから、衛星からのデータを受信する設備の建設、さらに衛星技術の支援や人材育成までをすべて含めた、「パッケージ」での輸出を考えている。
ASNARO-2の打ち上げと運用が成功し、そしてヴェトナムへの輸出も成功すれば、今後、他の東南アジアやアフリカといった国々への輸出の可能性も開けるだろう。
ASNAROの名前の由来となった樹木の「あすなろ」は、ヒノキに似ていることにちなみ、「明日はヒノキの木になろう」ということから名づけられたといわれている。はたしてNECのASNAROは、宇宙に育つヒノキになれるだろうか?
<取材・文・写真/鳥嶋真也>
とりしま・しんや●宇宙開発評論家。宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関するニュースや論考などを書いている。近著に『イーロン・マスク』(共著、洋泉社)。
Webサイト:
http://kosmograd.info/
Twitter: @Kosmograd_Info(
https://twitter.com/Kosmograd_Info)
【参考】
・NEC標準バス「NEXTAR」の実績と今後の事業(
http://mail.sjac.or.jp/common/pdf/kaihou/201708/20170803.pdf)
・先進的宇宙システム「ASNARO」の開発(
http://jpn.nec.com/techrep/journal/g11/n01/pdf/110106.pdf)
・標準衛星システム NEXTAR: バスシステム | NEC(
http://jpn.nec.com/solution/space/technology/bus/nextar.html)
・ASNARO 先進的宇宙システム|プロジェクト|一般財団法人宇宙システム開発利用推進機構(
http://www.jspacesystems.or.jp/project_asnaro/)
・技術実証衛星「ASNARO(アスナロ)-1」の打ち上げに成功しました(METI/経済産業省)(
http://www.meti.go.jp/press/2014/11/20141106003/20141106003.html)