基本味―甘味・酸味・塩味・苦味・うま味―の表情とは?
それぞれの味が「強い」と感じられたときに生じた典型的な表情を挙げます。
甘味…「口角が引き上げられる」
酸味…「眉が中央に引き寄せられる」「目が閉じられる」「目が見開かれる」「鼻にしわが寄せられる」「鼻の穴が広がる」「口をとがらす」「口角が引き上げられる」
塩味…「眉が中央に引き寄せられる」「唇がプレスされる」「口角が引き下げられる」「口が開かれる」
苦味…「眉が中央に引き寄せられる」「目が閉じられる」「目が見開かれる」「鼻にしわが寄せられる」
うま味…なし
水…なし
それぞれの表情筋の動きを感情に変換すると、甘味はポジティブ感情に関連した動きで、酸味・塩味・苦味はネガティブ感情に関連した動きです。とりわけ「眉が中央に引き寄せられる」動きは熟考に関連する動きであり、「鼻にしわが寄せられる」動きは嫌悪表情です。私たちが酸味・塩味・苦味を感じるときというのは、それらが身体にとって有害か否かを熟考し、有害だと判断したなら、すぐに吐き出す準備を身体が整えているのかも知れません。
美味しいか美味しくないかは「眉が中央に引き寄せされた」動きの後に注目!?
この研究は、美味しい表情と不味い表情を特定しているわけではありません。甘味・酸味・塩味・苦味・うま味という基本味に私たちがどんな表情で反応するかという、味覚と表情とのより根源的なつながりを解明しようと試みた研究です。
実用的な側面に本研究結果を応用させてみましょう。味を味わっているか否かは、「唇がプレスされる」「口角が引き下げられる」「口が開かれる」という表情で、しっかりした酸味・塩味・苦味には、「眉が中央に引き寄せられる」という表情で私たちの顔に表れるということです。
こうした表情の動きの後に、笑顔になれば美味しいということだとわかりますし、鼻にしわが寄れば(=嫌悪表情)美味しくない、眉間にしわ(=熟考表情)が残っていたままなら美味しいかどうか判断つかない、眉が引き上げられれば(=驚き表情)新奇な味を感じているということが予想されます。
接待やデートなどで相手の口と眉の動きを観察すれば、食事を楽しみたいのか、味に敏感なのか、味をよく確かめたいのか、などなど食に対する態度がわかるでしょう。
参考文献
Wendin, K.; Allesen-Holm, B.H.; Bredie, W.L.P. (2011). Do facial reactions add new dimensions to measuring sensory responses to basic tastes? Food Quality and Preference, doi:10.1016/j.foodqual.2011.01.002
<文・清水建二>
【清水建二】
株式会社空気を読むを科学する研究所代表取締役・防衛省講師。1982年、東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、東京大学大学院でメディア論やコミュニケーション論を学ぶ。学際情報学修士。日本国内にいる数少ない認定FACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)コーダーの一人。微表情読解に関する各種資格も保持している。20歳のときに巻き込まれた狂言誘拐事件をきっかけにウソや人の心の中に関心を持つ。現在、公官庁や企業で研修やコンサルタント活動を精力的に行っている。また、ニュースやバラエティー番組で政治家や芸能人の心理分析をしたり、刑事ドラマ(「科捜研の女 シーズン16」)の監修をしたりと、メディア出演の実績も多数ある。著書に『
「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』(フォレスト出版)、『
0.2秒のホンネ 微表情を見抜く技術』(飛鳥新社)がある。術』飛鳥新社がある。