また同氏は、朝鮮半島周辺に展開している米軍の増員も必要不可欠な要素であるとし、「米海軍の戦艦や潜水艦や、日本やグアム周辺で作戦を実行出来る爆撃機などが、今よりも多く配備される必要があるともした。仮にアメリカがこの作戦を準備するのであれば、数か月は掛かるであろうと予測している。
ハートリング氏は最後に、アメリカが、北朝鮮との開戦を決断するには、北朝鮮のソウルに向けた砲撃の対策を取らねばならない。シミュレーションによれば、開戦後に即、北朝鮮によるソウル砲撃が実行された場合、数万人の死傷者が出る可能性が高い。開戦に向けては、この砲撃設備をまず除去しなくてはならず、そのためには大規模な空軍兵力が必要であると明かした。
CNNは、北朝鮮との戦争は、人口密集地域である東アジアに多大な人命被害をもたらすものであり、総じて戦争の可能性は低いと締めくくった。
エスカレートするアメリカと北朝鮮の「ブラフ合戦」であるが、その裏では対話に向けた動きもある。
8月7日には、アメリカ・ティラーソン国務長官が「北朝鮮が一連のミサイル発射実験を中止すれば、北朝鮮と話し合いをする用意がある」としており、トランプ大統領の過激な発言の裏で、米政権が北朝鮮との対話の選択肢も残していると示唆している。また8日のトランプ大統領の「炎と怒り」発言は、米高官が「もともと予定されていた言葉ではない」と明かし、トランプ大統領も翌9日には「米国が核兵器を使用する必要がないことを望んでいる」と、前日の発言を緩和させるような考えを表明している。
8月6日から8日にかけて、フィリピンのマニラで開催された東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム(ARF)閣僚会議では、北朝鮮と韓国の外相も非公式ながら接触している。
韓国の康京和(カン・ギョンファ)外相と北朝鮮の李容浩(リ・ヨンホ)外相は、ASEANの夕食会場で会話を交わし、韓国の康外相は北朝鮮に「南北対話の再開」を呼びかけた。
これに対し、北朝鮮の李外相は「韓国側の提案は不誠実」であると批判はしたが、康外相は「韓国が、北朝鮮に対する制裁に参加しながらの対話提案は不誠実だということだろう」と、その背景を分析している。
ASEAN外相会合に、同じく参加している中国の王毅外相はこの件に関して、「北側が、南側の前向きな提案を、完全に拒絶したわけではないと感じている」とし、南北対話を支持することを表明している。
北朝鮮をとりまく緊張が高まる中、アメリカや韓国は、制裁や強硬策の裏で対話の糸口を探っている。「日米韓の連携を強化し、北朝鮮の制裁を強化する」ことを強く表明している日本政府であるが、外交の裏ルートでは米韓と同様に、対話のルートを探っているのだろうか。強硬論は必要ではあるが、一辺倒では事態は打開されない。
<文・安達 夕
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