朝鮮中央テレビが公開した、「火星14型」の2回目の発射準備の様子 Image Credit: KCTV
今回の発射成功後、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は、「米本土全域がわれわれの射程圏内にあるということがはっきり立証された」と述べたとされ、また第三者による計算からもそれが証明されていることからしても、北朝鮮が米本土に届くだけの性能をもったICBMの開発に成功したことは間違いないだろう。
もちろん、火星14型はまだ兵器としての出来は不十分であろうし、また発射を検知できるシステムや、迎撃できるミサイルも揃えている米国にとって、現時点ではまだ、それほど大きな脅威ではないかもしれない。
しかし、北朝鮮は火星14型よりも迅速かつ隠れて撃てる、より実戦向きの固体推進剤を使ったミサイルの開発を行っていることもわかっている。火星14型の2度の成功で、米本土にも届くICBMを開発できる能力をもっていること、そして実際にミサイルももっているということを世界に示せたことで、今後は、こうした固体のICBMの開発や試験により注力していく可能性がある。
また、ミサイルに積めるだけの小型核弾頭の開発に成功しているのか、その弾頭を大気圏再突入させ、正常に起爆させる再突入体の開発に成功しているのかといった問題もあるが、たとえまだ開発途中だとしても、完成は時間の問題だろう。
そもそも、北朝鮮による米本土に届くICBMの開発というのは、米国にとってはレッド・ラインとも呼ばれる、最後の一線であったと言われている。これまでは独裁者による危険な火遊びによる”対岸の火事”だったものの、それが直接自分たちのところまで飛んでくる可能性が生じた以上、これまで以上の対応を取らざるを得なくなる可能性が出てきた。
はたして米国は、これまで以上の何らかの行動を起こすことになるのだろうか。また北朝鮮も、今回の行為が米国のレッド・ラインに触れるものであることは十分認識していたはずだが、どのような狙いで今回の発射に踏み切り、そして次にどんな行動を考えているのだろうか。
筆者はその分野の専門家ではないため、この点については他に譲りたいが、いずれにしても、北朝鮮問題が平和裏に解決されることを願いたい。
<文/鳥嶋真也>
とりしま・しんや●宇宙開発評論家。宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関するニュースや論考などを書いている。近著に『
イーロン・マスク』(共著、洋泉社)。
Webサイト:
http://kosmograd.info/
Twitter: @Kosmograd_Info(
https://twitter.com/Kosmograd_Info)
【参考】
・防衛省・自衛隊:北朝鮮による弾道ミサイルの発射について(第2報)(
http://www.mod.go.jp/j/press/news/2017/07/29b.html)
・OSD Statement on North Korea ICBM launch > United States Forces Korea > Press Releases(
http://www.usfk.mil/Media/Press-Releases/Article/1261517/osd-statement-on-north-korea-icbm-launch/)
・Early Observations of North Korea’s Latest Missile Tests(
http://www.38north.org/2017/07/melleman072817/)
・North Korean ICBM Appears Able to Reach Major US Cities – Union of Concerned Scientists(
http://allthingsnuclear.org/dwright/new-north-korean-icbm)