「関係者の間でもこの問題がまだ知られていないのでは?」と山田氏は危惧する。
「直前になって、『本当にやれないの?』となるような気がします。それに会場を借りている協会や出展企業は立場上、強く言いすぎると、今後貸してもらえなくなる懸念がある。デモだけではなかなか周知されないのです」
他の開催都市の例をみると、’12年のロンドン、’16年のリオでも展示会は中止になっていない。
「オリンピック憲章ではレガシー(遺産)を残すようになっている。しかし、東京五輪で展示会場が使えないとなると、負のレガシーになってしまう。せっかく五輪で世界中から東京に人が集まるのに、展示会場が狭い、または中止となると、商談や展示会場の場が海外に出て行ってしまうでしょう」
ただでさえ、五輪後は経済不況が心配されている。対策をとるには1日も早い方がいい。「表現の自由を守る会」では、都議選立候補者に、分断会場問題を公開質問状を出していた。都では築地市場の豊洲移転問題がクローズアップされてきたが、この「分断会場問題」は、第二の豊洲問題とも言えるほど都民生活への影響が大きい。
<山田太郎氏>
前参議院議員。表現の自由を守る会会長。ニューカルチャーラボ社長、早稲田大学元准教授など。著書に「ネットには神様がいる」(日経BP社)など
<取材・文/渋井哲也>