東京都の受動喫煙対策はいったいどこへ向かうのか(都民ファーストの会政策パンフレットより)
飲食店の処遇を巡り、自民党と厚生労働省の折り合いがつかず、先の国会での提出が見送りとなった、健康増進法改正案-いわゆる受動喫煙防止法案であるが、政府に先んじて東京都で条例化しようとする動きが活発化している。
都議選における歴史的な大勝利をおさめた都民ファーストの会。都民ファーストの幹部は「今までにない行政のスピードになる」と強調しながら、公約に掲げている受動喫煙防止対策に関する条例案を9月の定例会に提出すると示唆している。
都民ファーストの会が掲げる、受動喫煙防止対策とはどのような内容なのか。今後、東京都における喫煙ルールはどのようになるのか。政府が検討する受動喫煙防止法案との違いを整理してみる。
受動喫煙防止対策―自民、厚労省、都民ファーストの違い
受動喫煙防止法案に関しては、喫煙者にとって一番厳しいと言われているのが厚生労働省案であり、その対極として、喫煙に関わる事業者(飲食業、サービス業等)への配慮を示した自民党案がある。今回、
都民ファーストの会が掲げる受動喫煙防止対策(※10P)は、この厚生労働省案と自民党案の問題点に対する一定の答えを示しているとも言われている。
教育施設、官公庁、医療機関に関しては、「屋内」、「敷地内」の違いはあれ、3者とも「禁煙」で相違はない。またバスやタクシー、鉄道、船舶等の公共交通機関においても同様に「禁煙」の方向性である。(自民のみ「貸切」の場合は除外や表示義務に留めている)
今回の受動喫煙防止対策において、最大の争点と言われているのが飲食店であり、また娯楽施設、宿泊施設等のサービス業である。
特に飲食店においては、30平方メートル以下のスナックやバーを除くすべての飲食店では「屋内禁煙(喫煙専用室設置可)」とする厚生労働省案に対し、自民党はあくまで「表示義務のみ」に留めようとしている。
この点に関しては、一般の意見も様々で、完全禁煙を歓迎する禁煙者たちがいる一方、せめてお酒を飲む場では煙草を吸いたいという喫煙者の意見もある。飲食店側からも、屋内禁煙となった場合、喫煙室を設置するスペースや資金の問題もあり、客足に大きなダメージが出ると危惧する声も少なくない。
この飲食店における喫煙問題に、一つの答えを出しているのが都民ファースト案である。
都民ファースト案によれば、飲食店において「屋内禁煙(喫煙専用室設置可)」としながら、「従業員を使用しない店」、「全従業員が同意した店」においては、喫煙を許可するという方向なのだ。
この案では、スナックやバー、キャバクラ等のいわゆる「大人の社交場」、「夜の店」では喫煙が可能となる目算が高い。また店主一人や、夫婦で営む小規模飲食店もそのまま喫煙が可能となるだろう。飲食店側、煙草を吸いたい客側の両方に配慮した案である。