一方、パチスロへの影響は深刻だと言える。パチスロの花形といえるAT・ART機に関しては、以前からその射幸性が問題視されており、メーカー同士の内部ルールで機械仕様を大きく変更したうえに、更なる規制である。今後は、現在ホールに設置されている5.5号機(純増2.0枚)や、10月以降に設置される5.9号機(MAX3000枚規制)よりも、出玉性能は大きく下回るとされている。
また年配層やサラリーマン層から人気の高いジャグラーシリーズ等のAタイプも、今回の規制により大きな影響を受ける。現在は1回の大当たりで約310枚程度のメダルの獲得が出来るが、新たな規制に則れば、大当たり1回240枚~250枚程度にまで獲得メダル数が減る。
AT・ART機にせよ、Aタイプ機にせよ、パチスロメーカー然り、パチスロファン然り、今回の規制により大きな影響を受けるのは必至である。
今回の規則改正のその他の内容については、本稿での言及はしないが、別の角度から1点論じてみたいと思う。それは「果たして、今回の規制はギャンブル依存症に資するのか?」という点。
警察庁が今回新たに規則に追加した項目に、遊技機試験における「4時間の出玉量」というものがある。当初警察庁は、4時間で5万円相当(あくまで仮で金額換算した場合)の出玉を下回ることを公言しており、この根拠として、パチンコ依存に悩む8割の人たちが、月に5万円以上を使用しており、その平均遊技時間は4時間程度というのを挙げていた。
これは、パチンコ・パチスロ依存に悩む人たちの電話相談機関である、特定NPO法人リカバリーサポート・ネットワークの報告書を参考にしたとされているが、当のリカバリーサポート・ネットワーク代表である西村直之氏は、このデータは「遊技性能の規制根拠になるものではない」、「5万円や4時間等の具体的な数値設定は依存リスクの軽減にはつながると報告していない」としている。
また一般社団法人ギャンブル依存症を考える会の代表である田中紀子氏もブログで、「パチンコ出玉規制はギャンブル依存症対策にはならないです」と言っており、過去にパチンコ依存症であった知人たち8名に緊急のアンケートと行い、その結果を報告している。結果は、8人ともが「依存症対策にならない!」というもの。
秋の臨時国会、もしくは年明けの通常国会において「カジノ実施法」が可決される予定である(昨年末のカジノ法案は、実施法制定に向けた「推進法」)。
その制定にさきがけ、「ギャンブル等依存症対策法案」が審議され可決される。国会の場において、カジノや依存症関連の問題が審議されれば、必ず「パチンコ」が槍玉に上がる。
今回の「パチンコ規制」は、国会の場で「パチンコ」が標的にされた際に(必ずされる)、監督官庁である警察庁が、十分に抗弁し得る「アリバイ」となるだろう。しかし一方で、本当にパチンコ依存問題に悩む本人や家族の助けになるルール作りとしての実効性には疑義もある。
行政、パチンコ業界、ユーザー、依存問題に悩む人々。そのすべての人々が、カジノに翻弄されている。
<文・安達 夕
@yuu_adachi>