TCOで比較するとわかる 「ほったらかし投資」の優位性
さて、ITの分野では、コンピュータ・システムの導入、維持・管理などに掛かる総経費を表すTCO(Total Cost of Ownership、総保有コスト)という指標がある。元々は、米国の調査会社、ガートナーグループが提唱したものだ。
TCOの構成要素は、1.資産コスト(ハードウエアやソフトウエアの購入費など)、2.技術サポートコスト(利用者の教育や質問に答えるヘルプデスクなどの費用)、3.管理コスト(資産管理やセキュリティ管理などの費用)、4.エンドユーザーコスト(利用者が同僚に操作方法を聞いたり、教えたり、業務に関係ない作業をするための費用)である。この中で、4.エンドユーザーコストは、IT予算に計上されていない、かつ、キャッシュアウトを伴わない「見えないコスト」であるが、人件費換算したら大きな金額となるため、これも含めてTCOを把握し、TCOを削減していこうとするものだ。
インデックス運用と個別株への投資とを比較した場合、個別株の長期保有か、あるいは、回転売買をするかによって手数料コストの面でどちらが優位かが異なってくると思われるが、筆者は、手数料コストよりも、両者ではキャッシュアウトを伴わない「見えないコスト」が著しく異なると考える。
具体的には、個別株への投資をした場合、毎日の株価チェック、投資先企業のニュースチェック、IRチェック、アニュアルレポート、四半期決算などの読み込み、投資を継続するか、株を売るか、株を買い増すかなどの判断の時間を積み重ねれば膨大な時間になり、人件費換算したら、手数料コストなどを大きく上回るものになるだろう。個別株への投資にどれだけ時間をかけているか、把握してみるといい。個別株への投資に係る自分自身のTCOを算定してみるといいだろう。
個別株への投資からインデックス運用へ変更すると、株価チェックが不要、アニュアルレポート、四半期決算、企業IR,企業ニュースを読まなくてもよい。インデックス投資家は特に何も読まなくてもよいが、何かを読むとすれば、マクロ指標くらいか?TCOが劇的に下がるだろう。インデックス投資では、投資の時間を減らして、仕事に集中できる。家族や友人との時間も充実する。趣味も深められる。
一方、パフォーマンスについて、インデックス運用と個別株への投資を比較すると、インデックス運用は市場平均のパフォーマンスであるが、個別株への投資は市場平均よりも上の時も下の時もあるだろう。なんとも言えない。個別株への投資は、投資先企業の倒産や市場退出のリスクがあるだろう。インデックス運用の方が、ベンチマークについて調査・研究・予想する主体が多く存在し、パフォーマンスの予想がしやすいとは言えるだろう。
<文/丹羽唯一朗>