重要文化財を微表情で科学する 不動明王は普段はニコニコ笑っていた!?

不動明王も、普段はニコニコ!? 目じりのしわから推察できること

 最後にもう一つ気になる表情といいますか、感情の痕跡があります。目じりを観て下さい。右目の目じりの方が見やすいと思いますが、そこに三本のしわが刻まれています。これはカラスの足あとといい、普通は笑顔になったときに生じるしわです。  しかし、不動明王の表情に笑顔はありません。それではなぜカラスの足あとがあるのでしょうか?  真顔のときにもカラスの足あと以外にも様々なしわが顔にある人を思い浮かべて下さい。おじいさんやおばあさんが思い浮かぶと思います。特定の表情を何度も長い年月をかけてする人にはその表情特有のしわが顔に形成されることが知られています。つまり目尻に笑いじわ、すなわちカラスの足あとがある人というのは、長い年月をかけ、日々笑顔を絶やさない人生を送って来た人なのです。  このように考えると、不動明王は、今は忿怒し、憂いを帯びた表情をしていますが、平生はきっとニコニコしているのだと思います。  観音三十三化身という思想があります。仏はあらゆるものに姿を変え、私たちを仏道の道に導こうとするという思想です。不動明王も例外なく、仏の化身です。そうであるならば、仏のにこやかな表情の痕跡が不動明王の目尻に残された、そんなふうに私は考えています。  たまには忙しい喧騒を離れて、美術家や博物館などで表情観察してみませんか?微妙な表情筋の動きの中に、作品の、作者の繊細なこころが垣間見れるかも知れません。 <文・清水建二> 【清水建二】 株式会社空気を読むを科学する研究所代表取締役・防衛省講師。1982年、東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、東京大学大学院でメディア論やコミュニケーション論を学ぶ。学際情報学修士。日本国内にいる数少ない認定FACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)コーダーの一人。微表情読解に関する各種資格も保持している。20歳のときに巻き込まれた狂言誘拐事件をきっかけにウソや人の心の中に関心を持つ。現在、公官庁や企業で研修やコンサルタント活動を精力的に行っている。また、ニュースやバラエティー番組で政治家や芸能人の心理分析をしたり、刑事ドラマ(「科捜研の女 シーズン16」)の監修をしたりと、メディア出演の実績も多数ある。著書に『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』(フォレスト出版)、『0.2秒のホンネ 微表情を見抜く技術』(飛鳥新社)がある。
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