さわだ ゆたか / PIXTA(ピクスタ)
共働きが当たり前の時代です。ご夫婦において、お互いの収入を知らないケースも増えています。収入が分らないということは、支出も貯蓄額も知らないということです。「子どもが生まれた」「住宅を購入した」といったライフイベントがあれば、お互いを知るきっかけになります。この機会がないまま過ごしてしまい、老後を迎えてから問題が発覚したら大変です。
共働きで家計を別々にしていて起こりがちなリスクの代表例は貯蓄不足です。お互いに相手が貯蓄していると思い込んでいて、いざ老後を迎えた時に貯金がなくて老後貧乏に陥るという話をよく耳にします。ダブルインカムなので大丈夫、というのは大きな落とし穴です。収入の多い家庭は貯蓄体質になっていないことが多いので要注意です。
最近、気になったケースについて考えてみます。
Kさん(32歳)は昨年13歳年上の男性と結婚し、今は二人暮らしです。仕事と家庭の両立をするには職場が遠かったこと、残業が多かったことを理由に、最近転職されて、お給料が下がってしまいました。これまでは、Kさんと夫それぞれが10万円ずつ負担して生活費としていました。以前と同額の負担は大きいので、減らして欲しいと夫に話したそうですが、聞き入れてもらえない状況です。Kさんは夫の収入を正確には把握していませんが、生活ぶりをみると、それほど贅沢をしている様子はありません。質素とは言えませんが、自由になるお金の余裕はあるはずなのに、拒否されるのはなぜなのか、Kさんは不思議でした。
Kさんの夫は一人っ子です。結婚まではご実家の近くに住んでいて、頻繁に行き来があったようです。実はご主人の銀行のキャッシュカードをご実家が管理されていました。ご両親は既に年金生活になっています。今回の転職がなかったら、発覚しなかったことです。
少子化が進みました。子どもや孫にはついつい甘くなり、お財布の紐が緩むと言います。教育資金贈与をし過ぎて自身の老後資金が不足してしまった、という例もあります。頼りにしてくる子どものために援助してやりたいという気持ちと同様に、今までお世話になった親を援助したいという気持ちも理解できます。Kさんの例は特別ではありません。自分は我慢しても、両親の老後や介護は十分に手当てしたいという人が増えています。相手の両親が絡んでくると遠慮がちになりますが、先ずは自分たちの生活をしっかり設計しないと共倒れになってしまいます。
夫婦で別管理をしていると、こういったことは分かりません。「自分のお給料だから好きに使って良い」と自己裁量になってしまいます。へそくり程度はあっても良いですが、お互いの収支を知っておくことで、大きなリスクは避けられると思います。
<文/宮﨑 真紀子>
みやざき まきこ●ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士
<記事提供:
ファイナンシャルフィールド>
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