GSLV Mk-IIIでインドは宇宙大国への道を進む
打ち上げを待つGSLV Mk-III Image Credit: ISRO
さらにISROは、GSLV Mk-IIIを使った大型の月・惑星探査機の打ち上げや、さらには有人宇宙船の打ち上げも計画している。
インドはすでに、2008年に月探査機を、2013年には火星探査機の打ち上げに成功し、大きな成果を残している。さらに2014年には、GSLV Mk-IIIの実験打ち上げの際に宇宙船の実験機が打ち上げられ、宇宙飛行に必要な技術の実証が行われている。GSLV Mk-IIIが完成すれば、こうした宇宙活動の幅も質も、より大きくなるだろう。
インドはかねてより、宇宙開発において長期的な戦略を立て、多くの予算を投入したり、人材の育成を行ったりと、宇宙大国を目指した、しっかりとした宇宙政策を進めてきてきた。今回のGSLV Mk-IIIの成功は、その蒔いた”種”が順調に育ち、成果が出つつあることを示している。さらに新型のエンジンの開発や、スペースシャトルのような再使用ロケットの開発も進むなど、その活力はいまだ衰えを見せていない。
今後もインドがこの道を歩み続けることができれば、米国やロシア、中国などと並ぶ、宇宙大国へのし上がることもできるだろう。それは日本の宇宙開発における地位の相対的な低下や、中国との緊張が高まるという可能性もある。願わくば、そうした危惧を乗り越えて、インドという独自の歴史と文化をもつ国が宇宙大国になり、人類全体の科学・技術の進歩、そして人類の宇宙進出にとって大きく貢献することを期待したい。
2014年に打ち上げられた有人宇宙船の実験機。インドは宇宙大国への道を順調に歩み続けている Image Credit: ISRO
<文/鳥嶋真也>
とりしま・しんや●宇宙開発評論家。宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関するニュースや論考などを書いている。近著に『イーロン・マスク』(共著、洋泉社)。
Webサイト:
http://kosmograd.info/
Twitter:
@Kosmograd_Info
【参考】
・First Developmental Flight of India’s GSLV MkIII Successfully launches GSAT-19 Satellite – ISRO(
http://www.isro.gov.in/update/05-jun-2017/first-developmental-flight-of-indias-gslv-mkiii-successfully-launches-gsat-19)
・GSLV Mk III – ISRO(
http://www.isro.gov.in/launchers/gslv-mk-iii)
・GSLV Mk III-D1/GSAT-19 Message from President – ISRO(
http://www.isro.gov.in/update/13-jun-2017/gslv-mk-iii-d1-gsat-19-message-president)
・LVM3 X / CARE – ISRO(
http://www.isro.gov.in/launchers/lvm3-x-care)
・ミサイル技術管理レジーム | 外務省(
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/mtcr/mtcr.html)