注目銘柄の行方は?――「値上げするヤマト」「禊ぎが終わったJAL」etc.
NY株の好調に対して、上値の重たい展開が続く東京市場。一体いつになったら明るい兆しは見えてくるのか?闇株新聞氏が’17年後半戦を占った
トランプ政権は失速していくでしょうが、設備投資と消費のギャップが拡大する“バブル”であるため、年内はNY市場も底堅い動きが続きます。おのずと、東京市場も底堅い動きが続くでしょう。
そのなかで注目の銘柄をいくつか紹介していきます。1つはヤマトHD。4月に、9月をめどに宅配便の基本運賃を5~20%引き上げる方針を固めたことはマーケットでも好感されました。実現すれば実に、消費増税時を除いて27年ぶりの運賃引き上げです。大幅な割引が適用されているAmazonなどの大口顧客にも値上げを求め、それに応じなければ取引を打ち切る方針とされています。
国内の宅配便市場を見ると、ヤマトが46%のシェアを握り、佐川急便が34%、日本郵便12%、西濃運輸4%、福山通運3%で、ヤマトと佐川の寡占状態であることがわかります。このような寡占市場で、トップ企業が恩恵にあずかっていないことのほうが稀です。値上げはむしろ、適正な価格体系を模索するための正当すぎる対策と考えています。
当然、Amazonとの交渉は難航するでしょう。そうなれば時価総額48兆円のAmazonのこと。最悪、時価総額1兆円のヤマトを飲みこもうと考える可能性もあるのでは……と考えています。
ついで注目は日本航空(JAL)です。’10年の経営破綻から7年が経ち、ようやく攻めの姿勢に転換できる体力ができあがってきています。
’10年10月の羽田の再国際化にともなって米国路線の発着枠はANAが4枠、JALが2枠と傾斜配分されたように、公的支援を受けて再生したJALはしばらく新規事業や投資ができない状況に陥っていました。’12年には国土交通省が「日本航空への企業再生への対応について」という文書を公布。JALの経営を監視し続けると明らかにしました。その最終年度が’16年度だったのです。今期(’18年3月期)は監視対象から外れた最初の年度。4月に発表した中期経営計画は、2020年度に売上高1兆5000億円(’16年度比16%増)という少々、控えめすぎる内容でした。“足かせ”がなくなった以上、M&Aを本格化して拡大路線を取ることも考えられます。LCCに関して言えば、ANAがバニラエアを100%子会社にしているのに対して、JALはジェットスターへの33%の出資に留めています。今後のJALの動向には注目です。
同じくお国の意向で包囲網を狭められている地銀にも注目です。森信親・金融庁長官は就任以来、地銀処理をチラつかせながら顧客重視の経営へ転換を図るよう圧力をかけてきました。そのため徐々に地銀の再編が進みましたが、多くはホールディング会社を設立してそのうえに別個の地銀が2つぶら下がるだけ。再編には程遠い内容なのです。森長官は今年7月で就任からちょうど2年。本来ならここで「任期満了」となるはずですが、続投となる可能性が濃厚です。もう1年森体制が続くことに地銀は戦々恐々としているのです。おそらく、今後はもう一段の再編劇が見られるのではと思っております。その後、横浜、福岡、七十七、静岡などの優良地銀に集約されていくのではないかと考えています。
東京市場は底堅い動きが続く
足かせの外れたJAL森長官に怯える地銀
[闇株新聞]’17年後半注目株
【ヤマトHD(東1・9064)】
株価:2458円 PER:57倍 PBR:1.80倍
予想配当利回り:1.10% 単元株数:100株
宅配便の基本運賃を5~20%引き上げることで“適正”な価格体系を実現か。大口顧客Amazonとの値上げ交渉が注目材料に
【日本航空(東1・9201)】
株価:3249円 PER:11倍 PBR:1.18倍
予想配当利回り:2.77% 単元株数:100株
前年度で国土交通省の“監視対象”を卒業。経営破綻から7年で禊を済ませ、今年度から増便、M&Aによる事業拡大路線にシフトか?
【七十七銀行(東1・8341)】
株価:492円 PER:9.6倍 PBR:0.39倍
予想配当利回り:1.83% 単元株数:1000株
森金融長官のもと地銀再編が一層加速するようであれば、東北6県で最大手の金融機関である七十七が東北地方の再編の旗振り役に?
【野村HD(東1・8604)】
株価:662円 PER:―倍 PBR:0.84倍
予想配当利回り:―% 単元株数:100株
’17年3月期は大和、日興を大きく引き離す好決算を発表。’90年代以来の“強い野村”復活なら「株価の伸びしろが大きい」(闇株氏)
【中部電力(東1・9502)】
株価:1529円 PER:16倍 PBR:0.69倍
予想配当利回り:1.96% 単元株数:100株
「東電解体に伴い最も恩恵を受ける企業」(闇株氏)。昨年から東電の柏崎刈羽原発(新潟)のSPC化案が浮上。中電、東北電が出資か
【闇株新聞】
’10年に創刊。大手証券でトレーディングや私募ファイナンスの斡旋、企業再生などに携わった後、独立。証券時代の経験を生かして記事を執筆し、金融関係者などのプロから注目を集めることに。現在、新著を執筆中
※株価などは6月1日時点
‘10年創刊。大手証券でトレーディングや私募ファイナンスの斡旋、企業再生などに携わった後、独立。証券時代の経験を生かして記事を執筆し、金融関係者・経済記者などから注目を集めることに。2018年7月に休刊するが、今年7月に突如復刊(「闇株新聞」)。有料メルマガ配信のほか、日々、新たな視点で記事を配信し続けている。現在、オリンパス事件や東芝の不正会計事件、日産ゴーン・ショックなどの経済事件の裏側を描いた新著を執筆中
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