東芝の上場廃止は不可避か?――監査法人との対立は収まらない

半導体事業買収交渉はオール日本vs米国か?

東芝

決算短信を発表するべき日に「通期業績見通し」を発表した東芝。半導体事業売却交渉も難航が予想される

 半導体事業の売却に関しても、行き当たりばったり感が際立っています。4月に東芝と四日市工場を共同運営しているウエスタンデジタル(WD)が巨額の設備投資を折半負担していることを理由に半導体事業売却の「独占交渉権」を要求していると突然報道されましたが、こんなのは事前にWDと話を詰めておくべきものです。  ただし、WDの主張には“オール米国”の意向が働いている可能性もあります。その報道の直前には米国際貿易委員会(ITC)が、東芝の半導体事業のドル箱であるNAND型フラッシュメモリが台湾の旺宏電子の特許を侵害している、として調査を開始しました。おそらく、ITCは“クロ”と認定するでしょう。そうなれば、分社化したNAND型フラッシュメモリは米国市場から締め出されることになります。これを材料に、揺さぶりをかけているわけです。  一方で、日本側は世界最大のプライベート・エクイティ・ファンドであるKKR(コールバーグ・クラビス・ロバーツ)を担ぎ出し、産業革新機構、日本政策投資銀行などが「オール日本」体制で買収交渉を成立させようと動いています。KKRを“顔”にしたのは、’15年6月まで日本取引所グループCEOだった斎藤敦氏がKKR日本法人会長だったからだと見ています。しかし、その動きはバラバラです。産業革新機構はWDへの資金提供も検討する節操のなさ。銀行団は1兆円規模の貸し出し残の回収のために、一刻も早く売り飛ばせと大合唱しています。これでは目先のお金に目がくらんで安売りされる結末しか見えません。  ただし、前述のようにPwCあらた監査法人の承認が得られなければ、東芝は有価証券報告書が提出できない状況です。今回も“遅刻”すれば、さすがに上場維持は難しいでしょう。となれば、焦って半導体事業を売却する必要もなくなってきます。乱暴に言えば、非上場ならば債務超過でもいい。むしろ焦って半導体事業を売却すれば、東芝は存在する価値もない企業になりさがるでしょう。 【闇株新聞】 ’10年に創刊。大手証券でトレーディングや私募ファイナンスの斡旋、企業再生などに携わった後、独立。証券時代の経験を生かして記事を執筆し、金融関係者などのプロから注目を集めることに。現在、新著を執筆中
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