スペインサッカーリーグでのプレーオフ大逆転勝利の陰に、とある日本人がいた!?

 2015年6月、スペイン・サラゴサで一人のサッカー監督が解任の危機に陥っていた。  旧ユーゴ出身のセルビア人、ランコ・ポポヴィッチは前年11月より成績不振に陥っていたスペイン二部の古豪、レアル・サラゴサ監督に就任した。  長年日本で監督としてのキャリアを積んできたが、2014年6月に成績不振と不適当発言(後述)が原因でセレッソ大阪の監督を解任され、スペインでは初仕事だった。財政難で補強など夢のまた夢、しかも怪我人続出でセンターバックもいないというとんでもないチームだったが、それでも引き受けた。  幹部の希望はなけなしの戦力をやりくりして6位までに食い込みプレーオフ進出、あわよくば一部復帰だった。サラゴサはギリギリ六位に食い込み、最低限の仕事は果たした。  そして迎えたプレーオフ第一ラウンドの対戦相手は三位のジローナだった。  ここで大惨劇が発生する。よりによって、ホームで0-3の惨敗。もう終わりである。  たしかに先発GKのボノがモロッコ代表に招集されてこの試合に出られず、控えGKのオスカルがヘマをやらかしたのは事実だった。  それにしても、0-3では弁明の余地はない。DFのマリオ・アブランテはもうシーズンが終わったと思い、家族と休暇の準備に入ろうとしていた。  そんなとき、ランコ・ポポヴィッチがスマホを開けると、LINEでいつもの通り日本からメッセージが届いていた。  監督就任以来、毎試合終わると直後にある男から一言メッセージが届いていた。戦う気はいつも満々の男だったが、さすがにこの場面では少し弱気の虫に襲われ、数日後のセカンドレグで敗退と同時に解任、というシナリオが頭をよぎっていた。  しかし、このメッセージを見た瞬間に、行けるのではないかというかすかな希望が湧いてきて、二十年来の親友であり、長年右腕を務める助監督のブラード・グルイッチに見せた。  アウェーのセカンドレグ前日に定例記者会見が行われ、ポポヴィッチはこう言い放った。  「私には、時差が七時間だか八時間だかある日本という遠い国から毎試合見て応援してくれている友人がいる。そんな彼から、試合直後にメッセージが届いた。“リヴァプール対ACミランのチャンピオンズリーグ決勝を忘れるな”。あのとき、リヴァプールは前半を終えて0-3だったにもかかわらず、後半に追いついて、逆転して、優勝した。明日、我々はリヴァプールになってみせる」  すなわち、逆転勝利宣言である。
次のページ
この記事は自慢である
1
2
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会