「経済学」が世界を滅ぼす!――限界に達した資本主義の行方
2017.06.21
「経済成長という幻想こそ諸悪の根源」と警告。「脱成長」を掲げ、『経済学が世界を殺す』を上梓した資源・環境ジャーナリストの主張が話題だ。経済成長が限界に達した今だからこそ、これからは資源や環境に配慮した「持続可能な発展」を目指す企業が買いになる!?
●資源・環境ジャーナリスト
谷口正次氏
前回のインタビューでは、資源と環境への依存で成り立つ成長は限界を迎えており、このままの産業構造で経済成長を続けていると、社会的な損失も深刻になっていくと語った谷口正次氏。
――「社会的な損失」とは、たとえばどういったことですか?
谷口:現代は高度な情報化社会のせいで、技術の進歩と市場競争のサイクルが早すぎる。A社が新製品を開発しても、それによる利益を十分に享受する前に、すぐB社が追従して競争が激化し、価格が下がってしまうんです。最初に新商品を出した者の利益は小さくなり、その結果、寿命の短い商品が大量の廃棄物として溢れ、希少な資源の無駄遣いを促進することになります。
――職場レベルでのもっと身近な悪影響もありますか?
谷口:国際競争力で勝つためには、労働生産性を上げなければいけないと言われますよね。しかし、労働の質を上げずに生産性だけ上げようとした結果、いわゆるブラック労働が蔓延してうつ病や自殺が増えているでしょう。うつ病・自殺による社会的損失は4兆3000億円という試算もあります。そもそも、人類は1万年前まで熱帯雨林で狩猟・採集をして暮らしていました。その状態がもっともリスクフリー、ストレスフリーであるように脳が初期設定されているんです。その後、環境が変わるたびになんとか適応してきましたが、現代の高度に文明化された経済・社会は、人類にとってもはや「適応限界」。このままでは「自己解体」していくのではないでしょうか。
――人類の文明が破綻してしまうと? そんな最悪のプランを回避するには、どうすればいいのでしょうか。
谷口:まずは、経済成長すればいい、という価値観を変えなければダメでしょうね。ものづくりには、資源を採掘して、精錬して素材にして、部品にして製品を組み立て、それが流通業者を通じて消費者の手に渡るというフローがあります。しかし、その川上と川下があまりにも断絶していて、消費者は川上のことを知らされていません。川下の付加価値ばかりが重視されて、川上である天然資源の価値評価額が不当に低くされているんです。
――これを是正するには、国レベルで政策を変える必要がありそうですが。
谷口:その通り。たとえば、価値の高い天然資源を消耗し、環境を破壊するような製品をつくるときには、「資源消費税」を徴収すればいい。その代わり、労働の対価である所得税や、社会保険料の企業負担分は大幅に減税する。そういうインセンティブを作ってやれば、みんなが競って資源を大切に使うようになるでしょう。
川下の付加価値ばかりが重視されるものづくり
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