Microsoft共同創業者ポール・アレンが世界最大の飛行機を開発!その正体は?

運ぶのは「宇宙ロケット」

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まるで2機の飛行機が並んでいるようだが、これで1つの飛行機である。傍らに立つ人と比べると、その大きさが際立つ Image Credit: Stratolaunch Systems Corp.

 これほど巨大な飛行機だが、運ぶのは乗客でも荷物でもなく、宇宙ロケットである。それもただ運ぶだけでなく、ロケットを空中発射させるための母機になる。  ロケットはロックの主翼の真ん中付近に吊り下げられ、ロックとともに離陸。そして上空まで飛行し、ロケットを切り離す。ロケットはその直後にエンジンに点火して宇宙へ向けて駆け上がり、一方のロックは飛行場に着陸。整備や燃料の補給などを行い、次の飛行にそなえる。  ロケットは、米国のロケットやミサイルの名門企業オービタルATKが製造している「ペガサス」というロケットを使う。ペガサスは小型のロケットで、約500kgの衛星を地球を回る軌道へ打ち上げられる能力をもつ。  オービタルATKはすでに、自社で保有する中古の旅客機を使い、ペガサスで人工衛星を打ち上げるビジネスを行っており、これまでに43機のペガサスが打ち上げられている。  ロックは機体が大きいため、1度に3機のペガサスを運んで発射することができる。この3機は、同じ軌道に乗せることも、あるいは1機ごとに機体の向きを変えるなどして、それぞれ異なる軌道に飛ばすこともできるという。  現在のところ、今後しばらくは、ロックの最終組み立てや試験など、飛行機として完成させることを目指した開発が続く予定となっている。そして、2019年にロケットの試験打ち上げを行い、その後本格的な打ち上げに入りたいとしている。 ⇒【画像】はコチラ https://hbol.jp/?attachment_id=142814

ロックはロケットを上空まで運び、発射するための飛行機である Image Credit: Stratolaunch Systems Corp.

空中発射ロケットの利点と欠点

 こうした空中発射ロケットは、通常の地上から発射する形態のロケットと比べ、いくつかの利点がある。  たとえば地上に専用の発射台を造る必要がないため、建設費や運用費を抑えることができる。ロケットの打ち上げごとに発射台を整備する必要もないため、打ち上げの頻度も増やせる。まさに飛行機が空港から飛び立つように、宇宙へロケットを打ち上げることができる。  また、上空は大気がやや薄くなるため、ロケットを効率よく飛ばすことができる。たとえば同じ性能のロケットでもより重い衛星を飛ばせるし、同じ重さの衛星なら、より小型のロケットで打ち上げることができるようになる。  さらに地上から発射する場合、飛行経路の下に人家などを避けるように飛ばす必要があり、迂回することでロケットの打ち上げ能力が落ちたり、あるいはそもそも打ち上げられない方角が生まれる。しかし空中発射であれば基本的にはどの角度へも自由に打てる。  しかし、なぜこれほどまでにいいことずくめなのに、空中発射ロケットは世界の主流にならないのかといえば、これらの利点を帳消しにするような欠点があるからである。  たとえば飛行機に積む関係上、あまり大きなロケットは打ち上げらず、それこそロックのような規格外の巨大な飛行機が必要になる。また、いくら発射台は必要ないとはいえ、ロケットや衛星を整備するための施設は必要になる。ましてやロックのような巨大飛行機であれば、なおのことその規模は大きくなり、結局発射台を造るのと大して変わらない。  また、ロケットは基本的に危険物なので、取り扱いが難しく、その辺にあるような空港では運用できない。さらに発射前のロケットや搭載された衛星には、発射直前まで電力や空調を供給する必要があり、飛行機に地上の発射台と同じ機能をもたせるような手間もかかる。  つまるところ、こうしたさまざまな利点と欠点を総合的に考えれば、空中発射にそれほど大きな旨味はない、というのが実際のところである。
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