シンガポールで2Gサービスの最終日に2Gサービスを利用
シンガポールで23年間にもわたり提供されたGSM方式による2Gサービスが役目を終えた。全世界では今もなおGSM方式の利用者が多いが、シンガポールで全社が2Gサービスを終了した背景とその影響を解説する。
シンガポールではシングテル・モバイル・シンガポールが1994年に2GとしてGSM方式を最初に導入し、M1とスターハブ・モバイルもそれに続いた。その後、3社とも3GとしてW-CDMA方式、4GとしてLTE方式を順次導入し、当時の世界最速となる下り最大300Mbpsの高速データ通信も早期に商用化した。
通信技術の高度化が進む中、2015年6月15日にシンガポール政府組織で電気通信分野を監督する情報通信開発庁(現・情報通信メディア開発庁)と携帯電話事業者3社は2017年3月31日をもって2Gサービスの提供を終了し、2017年4月1日より停波すると連名で発表した。
情報通信開発庁は2Gサービスのみに対応した端末の国内販売に必要な認証を2015年9月15日に終了し、3社は2016年11月15日以降に開通する前払い式SIMカードは2Gサービスを利用不可とした。さらに、改組後の情報通信メディア開発庁は2017年1月1日以降、小売事業者に対して2Gサービスのみに対応した端末の国内利用を目的とする販売を禁止し、違反すれば罰金の可能性があると告知した。並行して2Gサービスの終了に関して周知徹底し、一部の携帯電話事業者は店頭で同国の公用語である4言語で案内を掲載するなど、政府組織と携帯電話事業者が共同で円滑に2Gサービスを終了できるよう努めた。
そして、2017年3月31日に予定通り2Gサービスを終了し、停波は2017年4月1日に開始して2017年4月18日までに完了した。
通信機器ベンダのエリクソンが公開した報告書によると、2016年時点の資料ではあるが、世界で最も利用者が多い携帯電話の通信規格がGSM方式だ。しかし、シンガポールでは4G/3Gサービスのエリアが十分に整備され、世界的に見てもスマートフォン(スマホ)の普及率が高い同国では新しいスマホへの買い替えも進み、2Gサービスのみに対応した端末の利用者はごくわずかとなっていた。
店頭で公用語の4言語で2Gサービスの終了を案内
また、データ通信量が増大して高速かつ快適な通信の実現にはより多くの周波数が必要で、GSM方式で利用する周波数をLTE方式に転用し、4Gサービスの強化が適切とされたのだ。
携帯電話事業者3社はこれらの背景から2Gサービスを継続する利点は少ないと判断し、2Gサービスを終える意向を情報通信開発庁に通達した。情報通信開発庁は3社の判断に同意し、GSM方式で利用する周波数の利用権が満期を迎える2017年3月31日に2Gサービスを終了すると決めた。
LTE方式への移行を目的として一国のすべての携帯電話事業者がGSM方式を終了した事例はシンガポールが世界初となった。なお、日本はGSM方式を導入しなかった極めて少ない国のひとつである。