英国のEU離脱が、アイルランドとの抗争を再燃させる!?

ようやく開かれた扉を閉ざす、英国のEU離脱

デリーの街並み

 一方でジンメルは扉を、内部と外部を分かつ壁に取り付けられた「関節」と表現している。人間は壁を作ることで内部と外部を分離し、そこに扉という関節をつけることで内外の出入りを規制し、あるいは促す役目を果たす。かつて城郭内部のプロテスタント教徒を守り、カトリック教徒の侵入を拒んできたのがまさにこれだ。  その「関節」は今や取り外され、人や車が自由に行き来している。扉の鍵はすべて、プロテスタント系の聖コロンバ教会に保存されてある。分離した両岸をつなぐ橋は、外国人観光客がカメラを持って訪れる場所となった。英国のEU離脱が決まったのは、長く続いた紛争の歴史に終止符を打ち、平和な街を築こうとする努力がようやく実を結び始めてきた、そんなタイミングだったのだ。  それだけに、地元住民のショックは大きい。デリーの長年にわたる紛争は、つまるところイングランドとアイルランドの争いの側面も大きいからだ。英国のEU離脱は、両者の扉を再び閉ざしかねない行為と言える。地域住民のダメージをどう最小化するかも、離脱交渉の中の重要な鍵となるだろう。 <取材・文・撮影/足立力也(コスタリカ研究者。著書に『丸腰国家~軍隊を放棄したコスタリカの平和戦略~』など。コスタリカツアー(年1~2回)では企画から通訳、ガイドも務める)>
コスタリカ研究者、平和学・紛争解決学研究者。著書に『丸腰国家~軍隊を放棄したコスタリカの平和戦略~』(扶桑社新書)など。コスタリカツアー(年1~2回)では企画から通訳、ガイドも務める。
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