調布駅前開発で99本の樹木が“コッソリ”伐採の危機

住民の活動が伐採を「一時中断」

 そして今年3月、市議会は樹木の移植・伐採の補正予算を賛成多数で可決する。だが、このとき付帯決議がついた。 ・計画の執行は「守る会」の了承を得ることとする。 ・了承がない場合は、広く市民で協議をして合意を得たうえで議会に戻す。  当然守る会は了承せず、4月に18人の住民による協議「調布駅前広場について考える市民会議」が2回開催された。市民会議は公募ではなく、市が人選。守る会からは2人入ったが、あとは自治会、商工会、商店会の役員などが事情をよく知らぬまま臨んだ。
mamorukai

相馬さんがひとりで始めた「守る会」は続々とメンバーを増やしている

 ところがふたを開けると、「調布駅前広場は1年に300日は何らかのイベントで使われているから、その利用の幅が狭くなるのでは」と計画への抵抗感が生まれたのだ。「ロータリーは拡張しすぎ」「今のままでいい」「計画の全体像からゆとり空間が後退している」等々、樹木伐採だけでなく駅前開発全体への疑問が飛び交った。  この結果を受けて、市民会議は今後の続行が決まった。ある市会議員は「補正予算の執行期限は6月末。でもこのままでは、その着工もあり得ない」と予測する。つまり2018年竣工は難しいということだ。  守る会の署名は約1万6000筆集まったところで終了した。市は「樹木は30本を残し、21本は移植するが駅前開発が終われば戻す」と現時点では約束しているが、予断は許さない。市民会議が継続するとはいえ、多数決で結論を出すわけでも決定権があるわけでもなく、あくまでも同席している市職員の「理解」で市議会に報告がなされるからだ。今は住民の活動によって「一時中断」しているにすぎないのだ。  守る会の井上光興さんは「私たちはただ反対しているのではありません。緑を残し、地下駐輪場も実現し、市民がイベントをできるような駅前広場の代替案を持っています。補助金がなくても、市民が知恵を出し合えばやれるんです」と強調する。  調布市民の癒しとなってきた樹木が伐採の危機を回避できるかどうか、今後に要注目だ。 <取材・文・撮影/樫田秀樹>
かしだひでき●Twitter ID:@kashidahideki。フリージャーナリスト。社会問題や環境問題、リニア中央新幹線などを精力的に取材している。『悪夢の超特急 リニア中央新幹線』(旬報社)で2015年度JCJ(日本ジャーナリスト会議)賞を受賞。
1
2
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会