そして今年3月、市議会は樹木の移植・伐採の補正予算を賛成多数で可決する。だが、このとき付帯決議がついた。
・計画の執行は「守る会」の了承を得ることとする。
・了承がない場合は、広く市民で協議をして合意を得たうえで議会に戻す。
当然守る会は了承せず、4月に18人の住民による協議「調布駅前広場について考える市民会議」が2回開催された。市民会議は公募ではなく、市が人選。守る会からは2人入ったが、あとは自治会、商工会、商店会の役員などが事情をよく知らぬまま臨んだ。
相馬さんがひとりで始めた「守る会」は続々とメンバーを増やしている
ところがふたを開けると、「調布駅前広場は1年に300日は何らかのイベントで使われているから、その利用の幅が狭くなるのでは」と計画への抵抗感が生まれたのだ。「ロータリーは拡張しすぎ」「今のままでいい」「計画の全体像からゆとり空間が後退している」等々、樹木伐採だけでなく駅前開発全体への疑問が飛び交った。
この結果を受けて、市民会議は今後の続行が決まった。ある市会議員は「補正予算の執行期限は6月末。でもこのままでは、その着工もあり得ない」と予測する。つまり2018年竣工は難しいということだ。
守る会の署名は約1万6000筆集まったところで終了した。市は「樹木は30本を残し、21本は移植するが駅前開発が終われば戻す」と現時点では約束しているが、予断は許さない。市民会議が継続するとはいえ、多数決で結論を出すわけでも決定権があるわけでもなく、あくまでも同席している市職員の「理解」で市議会に報告がなされるからだ。今は住民の活動によって「一時中断」しているにすぎないのだ。
守る会の井上光興さんは「私たちはただ反対しているのではありません。緑を残し、地下駐輪場も実現し、市民がイベントをできるような駅前広場の代替案を持っています。補助金がなくても、市民が知恵を出し合えばやれるんです」と強調する。
調布市民の癒しとなってきた樹木が伐採の危機を回避できるかどうか、今後に要注目だ。
<取材・文・撮影/樫田秀樹>