中国は今やGDPで世界2位の経済大国だ。中国の成長に学ぼうと、日本での注目も高まっているようだ。中国では無数のビジネス本が出版されており、日本語に翻訳されたものも少なくない。だがそれらを読んでも、成長の“秘密”は決してわからないだろう。国と企業家が一体となり、さまざまな汚職や不正を働くことが「奇跡の高成長」を支えてきたからだ。
そうした中で異彩を放つのが先ごろ出版された高口康太著『
現代中国経営者列伝』(星海社新書)だ。
同書は、企業家8人の伝記を通じて改革開放以来の中国経済史を描くという意欲的な内容だが、表向きの建て前だけではなく、グレーゾーンにまで踏み込んで中国経済成長の“秘密”に迫っている。
その「秘密」とは何か?彼らの成長の背後には、常に巧みなブランド乗っ取り、愛国心を煽っての訴訟での勝利、政府との太いパイプを生かした不動産開発といった「裏の成長要因」がつきまとうということだ。
しかし、これについては、どこかで見たような感覚を得るかもしれない。
そう、我が国もまた、権力者に近い人間が優遇されうネポティズム(縁故主義)と、「忖度」がまかり通る社会になりつつあるのだ。そしてそれは、爆発的な経済成長を伴わず、庶民にはほとんど何の恩恵も得られないものになる可能性が高いのである。
<文/HBO取材班>