チャーター便は、臨時で飛ばしたいというオーナーが存在するものだ。今回の依頼主は、吉林省延吉の「天宇集団」という多くのグループ会社も有する延吉を代表する企業だ。天宇は傘下に旅行会社も持っているが、チケット販売は一般の旅行会社へ委託しているので外国人でも乗ることができる。
当初、丹東の旅行会社では利用者が少ないのでこのチャーター便は長くは続かないと言っていたが、すでに1か月間継続していることになる。
この意外とも思える増便の背景には中国政府の動きがあるのではとの見方が囁かれ始めている。
「北京からの中国国際航空は、大赤字だったのと北京空港のキャパ不足もあり停止させたかったが、中朝関係を考えると簡単には停止できなかったのでしょう。ただ、昨今、北朝鮮に対する国際的な圧力が高まってきたので、中国は外向けのアピールとして国連制裁を履行して北朝鮮に対して強く出ていることを示すために制裁を理由に停止させた可能性が高い。一方、中国の本音としては本気で北朝鮮の首を絞める気はないので、政府ではなく、あくまで民間企業がチャーターしたという形であれば、国際的な批判をかわせると踏んだのかもしれません」(丹東の旅行会社関係者)
また、丹東-平壌のチャーター便就航の背後には中国政府からの何かしらの支援があるのではという噂もある。
真偽の程は定かではないが、中国としては、正面では強い中国を国内へアピールしつつ、右を向けば、国際社会に国連と足並みをそろえているとアピールし、左を向けば、北朝鮮に援助国だとアピールして3方に対して顔を立てることができる。実に中国らしい外交戦術が見え隠れするようではある。
<取材・文/中野 鷹>