「役務サービスの罠」をくぐり抜けてきた高野友梨氏の「辣腕」――山本一郎【香ばしい人々returns】
2014.11.22
http://sankei.jp.msn.com/life/news/130318/trd13031822100025-n1.htm
細胞レベルで若返るなんてあり得るわけないだろ。
先に、労働基準監督署でユニオンまで出てきて指導されておりましたが、これって単なるブラック企業のあれこれとはちょっと性質が違ったりするんですよね。
※たかの友梨に対し労基署が是正勧告と行政指導を行いました
http://esthe-union.sblo.jp/article/102652513.html
※たかの友梨氏がパワハラ?「あなた会社つぶすの」 録音データ公開
http://withnews.jp/article/f0140828001qq000000000000000G0010401qq000010751A
この中で「女性従業員が労働環境の改善を訴えてることについては『つぶれるよ、うち。それで困らない?この状況でこんだけ働けているのに、そういうふうにみんなに暴き出したりなんかして、あなた会社潰してもいいの』と迫った」としていますが、一見豪華に見える生活をしている高野友梨女史も、経営者として相当な危機感をもって企業経営にあたっていた話が漏れ伝わってきます。
日刊ゲンダイでは面白おかしく高野女史のセレブな生活を記事にして煽っていますが、この手の「役務サービス」というのは本当に破綻してしまうと多くの関係者が巻き添えになる恐ろしいビジネスモデルだったりするんですよ。
※パワハラ疑惑「たかの友梨」社長 5億円大豪邸は会社名義
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/geino/153005
というのも、高額商品やサービスを買ってもらって、自社クレジットで分割して支払ってもらうモデルというのはいままでもたくさんありましたが、この役務サービスの仕組みを簡単に言えば、会社がサービスをお客様に提供する前に、お金が支払われて入ってくるというものです。
つまり、先に入金はあるけど、それは売り上げではなく前受金などで処理するべきものであり、契約されたサービスを実際に行って始めて売り上げになるべき性質のものです。しかし、たかの友梨に限らず、多くのエステティックサロンや英会話学校、最近だと痩せる為のフィットネスクラブなどでは、この役務サービスの会計を悪用して、会社が勝手に利用者から受け取った前受金を使って出店展開をしたり、芸能人を使って派手な広告宣伝を行ったり、自社施設を作ったり、豪邸を建てたり、競走馬を買ったりして、今後必要とされるサービスのための前受金を使い込んでしまうわけですね。
役務サービスが一番恐れるのは、信用不安が契約者の間に広がった後の返金が多発することです。前受金をもらって会社にキャッシュがあるはずが、これを使い込んでしまうと契約者に返金ができなくなってしまいます。金が細ると広告宣伝を打つことも新規出店することも不可能になり、一気に経営不安に陥る逆回転をするのが役務サービスの怖さなのです。
この仕組みを過剰に利用して、盛大にずっこけたのが英会話NOVAの猿橋望さんであり、カネに詰まった後に頼った先は、一部でダークな人気を集める闇株先生であります。最終的には完全に役務サービスの罠に嵌り、資金繰りが逆回転して暴力団の介入を呼んで身動きが取れなくなった挙句の業務上横領での起訴、そして実刑判決という転落をしてしまいます。目の付け所が良いアグレッシブな経営者ほど、アクセルを地べたまで踏む恐ろしさとそのリスクを軽視するわけであります。
高野女史に関しては、このあたりの仕組みや失敗の方程式も良く分かっていて、うまくさじ加減をすることで長年にわたって経営してきました。その意味でも、業界内ではとても優秀な女性経営者の一人だと目されてきました。まあ、目の前に使ってもよさそうなキャッシュが積まれていたら、少しぐらいはいいだろうとつまんでしまう経営者が多いのが現実ですからな。豪邸建てたのセレブな生活しているのというのは、不二ビューティからすれば「安全運転で全然賄える範囲の出費」だったと見られています。
労働契約が曖昧なのは、エステ業界でかなり共通した部分ではあるわけですが、それを是正したらキャッシュが出て行ってしまい、この役務サービスの資金の逆回転で沈没しかねないという恐れは常にあったのでしょう。そして、高野女史が生き残ってきた秘訣も、このあたりの操縦をかなり細やかにしっかりとやり、部下に強いプレッシャーをかけてでも大きな組織を回していく手腕があったからです。
一方で、エステ業界は必ずしも健全ではないのは述べてきたとおりで、他にも問題点が多数あるわけですけれども、今後は安値のサービスで客を釣り、不必要な高額サービスを店頭で買わせようとする商法にもメスが入っていく可能性が強いです。医師法違反とあわせて、このあたりは抜き差しならないところなのではないでしょうか。不二ビューティがどのようにしてこの難局を乗り越えて行こうとするのか、固唾を呑んで見守っていきたいと思います。
<文/山本一郎>
やまもといちろう●1973年東京都出身。アルファブロガー。ネット業界やゲーム業界に精通し、投資業務とコンテンツ開発をメインにWebで数々の評論活動などを行う。イレギュラーズアンドパートナーズ株式会社代表取締役。最近では子宝にも恵まれ、仕事と家庭を両立させつつも、さらにシミュレーションゲーム、プロ野球の応援などにも精を出す。
「ビューティーサロンたかの友梨」を運営していた不二ビューティの件は、かねてからカウントダウンされていたエステサロン系・脱毛サロン系への包囲網の一環として起きてしまった悲しい事案でありました。
それまでも、景品表示法違反で指導されたり、医療行為まがいであるにもかかわらず施術時に医師資格を持った人間がいないなどの問題で聴き取りをされるなど、判断に悩むところは過去さまざまあったようです。
※「細胞レベルで若返り」根拠なし 「たかの友梨」景品表示法違反で改善指示
この連載の前回記事
2014.10.31
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