ところが、米国に予想を覆してトランプ大統領が誕生した。彼は米国第一主義を掲げ、保護貿易に向かう姿勢を示した。しかも、北米自由貿易協定(NAFTA)を通して米国の長年のパートナーであったメキシコからの輸入には関税を設けるという考えも表明するに及んで、両国の関係は急きょ悪化。それまで北米構成国の一つという意識でいたメキシコは、トランプから差別されたと感じて、ここで初めてラテンアメリカに視線を向けるようになるのであった。米国との一極外交の放棄をメキシコは決めたのであった。
メキシコが南米との関係強化に方針を変えたのを見たバチェレとマクリは、先ずラテンアメリカに共同市場の創設の必要性を確認したのであった。今年2月にチリの首都サンティアゴで両者は会談し、出来るだけ早い時期に外相と商業相の会議を開き、ラテンアメリカ共同市場の創設を確認する必要性があることで双方が確認したのであった。それが、今回の4月7日のブエノスアイレスでの初会合となったのである。
この統合には問題もある。例えば、メキシコ、ブラジル、アルゼンチンと3か国が自動車の重要な生産国となっている。その中でも、メキシコの競争力は世界のトップレベルで、共同市場に成ると、安価な車がアルゼンチンやブラジルに輸入される可能性もある。それには事前の調整が必要となって来る。
<文/白石和幸>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。