開発が計画されている横浜市栄区上郷の緑地
現地では当初から、構想に反対する地元住民が署名活動などを展開。2007年9月に9万筆、2014年に11万筆の反対署名を集めて市に提出した。住民団体
「上郷・瀬上の自然を守る会」は「開発賛成の署名はわずか888筆に過ぎない」と、開発反対の声が大きいことを主張している。
一方、市が2014年5月に実施した公聴会では、構想に賛成する公述人が8人だったのに対して、構想反対の公述人はわずか2人だった。これは、事前に公述人を募集する「公述申出」の受け付け段階で、構想賛成の立場からの応募が約2000通にのぼったためだ。
賛否ほかの公述人の数は、公述申出の応募者数に応じてそれぞれに割り当てられる。今回の公聴会でも賛成意見の応募は6760通で、反対の3360通を大きく上回った。そのため当初、公述人の割り当ては賛成7、反対3、その他の意見3という構成だった。
ところが当日、賛成の公述人は5人に減っていた。「その他の意見」が実質的に反対の立場で公述したことで賛成5反対6となり、構成が逆転してしまったのだ。この理由について市都市計画課は「(賛成側7人のうち)4人が公述を辞退した。そのため応募者から公述人を繰り上げたが、そこでも1人と連絡がとれず、結局合計で5人となった」と説明する。
公述申出の受付期間は昨年10月から11月にかけての約1か月。「仲間で手分けして反対署名を集めたが、3000通ほど集めるのがやっとだった」と「上郷・瀬上の自然を守る会」代表世話人の井端淑雄さんは振り返る。
ともあれ、約2000人が応募するほど熱意のあった賛成側に、7人中5人もの「公述欠席」が生じたことは不可解だ。実は「さほど乗り気でない人」や「つき合いで応募した人」などがかなりの程度を占めていたのでは……との印象さえ抱かせる。
公聴会当日、傍聴には500人以上が集まった。アウトドアウェアブランドで市内にオフィスを構えるパタゴニア日本支社の従業員も緑地保全の立場から駆けつけたという。計画案について、市は2017年度中にも計画決定する方針だ。公聴会の扱いに関して、市は「意見を踏まえて計画案を検討するが、賛否の割合が案の是非を左右するものではない」と表明している。
<取材・文・撮影/斉藤円華>