そしてドイツ側を擁護した人がもう一人いた。
それは、国防相のマティス大将だ。彼は、このトランプのドイツに対する偏見的な見方に釘を刺すように、メディアを利用して<「大統領はNATOがどのように機能しているのか理解していない」>と指摘したのである。
そして、上院軍事委員会の席で<「過去に借りがあるとされる資金を勘定に加えることは私にはできない。何故なら、NATOで行われているのは、そうではないからだ。能力を介してそれを考慮するのである。それは各国自らの取り決めなのである」>と述べている。(参照:『
Diario Latinoamericano』)
即ち、NATOの規定はGDPの2%を国防資金として拠出することに成ってはいるが、それは各国が任意に国家規模による能力によって自主的に拠出することになっている。米国が常に一番多く資金を提供しているということから、最高司令官は常に米国軍人が就くことになっているということなのである。トランプがビジネス面から見て負債があるとかないとかというものではないということなのである。そうでないと、28か国の結束を促すことはできないということなのである。
マティス大将がなぜここまで猛反論したかというとそれには理由がある。
何しろ彼は、国防長官として2月にヨーロッパを訪問した時に2%の資金拠出を加盟各国に要望しながらも、米国は今後もNATOの重要性を認識して支援して行くことを約束したばかりなのである。そこに来て、今回のトランプのメルケルに請求書を手渡したという行為。これでは、マティス国防長官の面子丸潰れだと彼は受け止めたのも当然だろう。
トランプは選挙戦中に公約していたことを実行しようとする以外に聞く耳を持たない人物であるというのが新ためて認識された。彼を囲む側近が彼の政権にいつまで留まり続けることができるか疑問は尽きることはない。
<文/白石和幸 photo by
IAEA Imagebank via flickr (CC BY-SA 2.0)>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。