予想外に躍進しなかったオランダ極右政党。しかしその息遣いは健在

EU諸国との連携で、EUという存在を改めて示せたのもうまかった

 さらにこの時、ルッテ首相は、対トルコで他のEU諸国とうまく連携を図れました。ナチス発言に関しては、ルッテ首相の態度に続き、隣国ドイツのメルケル首相やデンマークのラムスセン首相などが不快感を示しました。  EU全体という意味では、トゥスクEU大統領、欧州委員会のユンケル委員長なども、このエルドアン大統領の言動を問題視する発言をしています。  トルコのEU加盟が遠のいたのは言うまでもありませんが、オランダの選挙にとって重要なことがあります。それは、このようにEUの主要プレーヤーがルッテ首相サイドにいて、トルコが別サイドにいる構図を作り出したことです。  ルッテ首相はこの時、EUという「仲間の存在」を国民に改めて認識させることに成功しているわけです。  極右政党の自由党は反EU。いくら対トルコで強くても、強い態度を取っていたのは自由民主党だって同じこと。さらに、自由民主党にEUとしての一体感を演出されてしまったわけです。まさにしてやられたりです。

自由党は敗北ではないという事実

 いろいろ自由民主党の終盤の巻き返しについて見てきましたが、事実として認識すべきことがあります。  それは、自由民主党は8議席減らしての勝利という点。一方、想定を下回っていたものの、自由党は5議席増やし、第2党になったわけです。自由民主党は、この事実を重く受け止め、自由党の意見もある程度考慮することが必要になってくるでしょう。  そして、今はオランダ経済が好調だからいいものの、どう政局が変わるかも分かりません。自由党は敗北していません。次の機会が来るのを待っているのです。 <文/岡本泰輔> 【岡本泰輔】 マルチリンガル国際評論家、Lingo Style S.R.L.代表取締役、個人投資家。米国南カリフォルニア大学(USC)経済/数学学部卒業。ドイツ語を短期間で習得後、ドイツ大手ソフトウェア会社であるDATEVに入社。副CEOのアシスタント業務などを通じ、毎日、トップ営業としての努力など、経営者としての働き方を学ぶ。その後、アーンスト&ヤングにてファイナンシャルデューデリジェンス、M&A、企業価値評価等の業務に従事。日系企業のドイツ企業買収に主に関わる。短期間でルーマニア語を習得し、独立。語学コーチング、ルーマニアビジネスコンサルティング、海外向けブランディング、財務、デジタルマーケティング、ITアドバイスなど多方面で活動中。
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