「特例ビザ」で東北に中国人観光客を。上海、大連の「観光セミナー商談会」が盛況
⇒【中国人観光客の推移】https://hbol.jp/?attachment_id=13903
東日本大震災以降、激減した中国人観光客を呼び戻そう、国土交通省東北運輸局、宮城県、福島県、岩手県、東京都、公益社団法人宮城県観光連盟、公益財団法人東京観光財団主催で、10月28日に中国上海、30日は大連で「東京・東北観光セミナー商談会」が開催された。
今回、日本からは、11社5団体、大連からは、28社36人が訪れた。会場では、各分野の担当者からの最新情報に熱心に耳を傾け、商談している姿が見られた。
観光庁の宿白旅行統計調査によると、震災の年に大きく落ち込んだ中国人観光客数は、東京や全国的には、戻りつつあるようだが、宮城、岩手、福島といった東北3県の回復は遅れている。そこで日本政府は、被災した東北3県への観光支援として、震災直後の2011年7月から「東北三県数次査証」を開始した。東北三県数次査証とは、中国人向け個人観光ビザで、宮城、岩手、福島のいずれかの県に1泊以上することを条件に取得でき、滞在期間最大90日、3年間有効で何度でも日本へ入出国できる個人向けマルチビザを提供する制度である。同制度は、沖縄県でも実施されている。
この制度を存分に生かして観光誘致へつなげるのが東北3県の狙いだ。宮城県経済商工観光部の三浦さんに話を聞いてみると、「上海より大連のほうが反響が大きく昨年以上の手応えを感じています。宮城での人気観光地は松島で、他にも温泉と健康診断や治療をセットにした医療ツーリズムも人気を集めています」と話してくれた。続けて、放射能の風評被害は感じるかと尋ねると、「今ではほとんど感じませんし、質問されることも少なくなっています」と笑顔で答えてくれた。
この特例ビザの存在は日本ではあまり知られていないと思うが、いわゆる知日派の中国人の間では取得する人も少なくない。というのも、数年前まで、中国人で日本のビザを取得できたのは、留学か、研修などの仕事や出張など厳しく限られており、観光入国は、個人行動ができない添乗員同行の団体旅行が主で、日本に10年近く留学、仕事で滞在経験があり、東京を離れて10年経つ私より東京に詳しい知人も友だちに会いに行けないとボヤいていたような状況だったのだ。そんな中、こうした特例ビザは知人にも会いにいける自由度の高いビザとして密かに人気になっているのだ。
ちなみに、こうして日本に訪れようとする彼らは、今、日本でイメージされるような初めて日本へ行き大声出したり、マナーが悪かったりで日本人が眉をひそめるような中国人たちとは違い1人で電車やバスで自由に移動できるし、日本の習慣やマナーも熟知している知日派と呼べる人たちだ。そんな彼らが、この制度を利用して3年マルチビザを取得し、留学時代の同級生に会いに行ったり、日本各地を一人旅したりと楽しんでいるようだ。
さらにこの制度は、旅行者個人のメリットだけでなく、旅行業界の関係者にもメリットがある。というのも、この特例ビザは、個人では取得できず、必ず中国の旅行会社を通して取得する必要があり、日中両国の旅行関係者がウィンウィンになるように配慮されている点にあるからだ。
今回行われた「東京・東北観光セミナー商談会」では、そうした特例ビザを活用し、「最先端の日本文化を体験できる東京」と「伝統的な日本文化を体験できる東北」を結ぶ観光ルートや新たな免税制度の適用でより魅力が増したショッピングなどを提案し中国人旅行者を増やそうと官民一体となってアピールしていることを感じさせてくれた。
放射能問題も情報等が統制されている一般的な中国人は、風評を信じて日本を訪れようとしない人も少なくない。しかし、日本を熟知している人たちは確かな情報を調べてあげて問題ないことを知っている。
尖閣問題を筆頭に、最近ではサンゴ密猟の不法漁船など、日本では何かとイメージが悪い中国人だが、日本にとっても重要な観光客であると同時に、こうして日本に親しみを抱いていたり、日本の事情に詳しい知日派の中国人が日本を訪れることで、中国に今の日本を広めてもらうこともまた、大切なことではないだろうか。
<取材・文・撮影/我妻伊都>
「宮城、東北の魅力をアピールして中国人観光客を呼び込みたい」――
今年8月時点で来日した中国人旅行者がすでに昨年一年間を上回るほど賑わっている。まさに「政冷経熱」を彷彿とさせる状況だ。政冷経熱は胡錦濤前国家主席が作ったという言葉だが、多くの日本人がイメージする中国人=反日と少し現実は違うのかもしれない。
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