介護業界で破綻が急増。老人ホームが倒産するとどうなる?

「終の棲家」の契約にあたって最低限知っておきたいこと

 倒産のおそれは有料老人ホームだけではない。専門スタッフの援助を受けながら少人数で共同生活を行う「グループホーム」や「サービス付き高齢者向け住宅」(サ高住)の倒産も増えているのだ。  これらについても、問題は有料老人ホームの場合とほとんど変わらない。ただし、これらの施設では、施設が倒産し人手に渡った場合でも、契約内容によっては、新しい所有者に対しても、居住の権利を主張できる場合がある。契約にあたって気をつけるべきだろう。  老人福祉・介護事業の経営見通しが年々厳しくなる中で、これから利用者となる際には、十分に業者を吟味するとともに、最悪の事態に備え、契約の内容にも注意しなければならない。  最低限知っておきたいのは、「居住の権利がどのように設定されているか」である。具体的には、「利用権」の場合は、法的な権利としては弱い。あくまでも事業者と利用者の間の契約に基づく権利であり、法律によって規定されているわけではないので、事業者が破綻し施設(不動産)が譲渡された場合、「利用権」は保護されることがない。  一方で、「賃借権」であれば、借地借家法により、教授中に不動産の所有者が変わっても、賃借権が優先するとされている。相続も可能になる。配偶者や子も住み続けることができることも有利な点としてあげられるだろう。ただし、「賃借権」であっても、利用者が入居前に設定された抵当権には負けてしまう。最終的に抵当権が実行され競売手続まで進む場合は、退去しなければならなくなるので、賃借権でまれば常に保護されるわけでもないのは難しいところだ。 「賃借権」は、事業者倒産の際でも、居住の権利を主張できる場合があるが、「利用権」は主張できない。慎重に吟味して老後の生活に備えていただきたい。 <文/高崎俊(弁護士)> ※コメントにおいて賃借権と抵当権の関係についてご質問を受けましたので、それを踏まえて、賃借権と抵当権の関係について説明を追加し、結論部分を改稿いたしました。(2017.3.27)
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