北朝鮮は、一般的な観光だけではなく、スポーツなどの大型イベントは観光とは違った目的の人を集められ外貨が稼げると学んだのか、昨年12月下旬には早くも2017年の年間イベント表を各代理店へ配布している。これは過去にない異例の対応だ。
北朝鮮の祝日には公演会が多く開催されており外国人も鑑賞できる
配布されたイベント表を見てみると、定例の大型イベントの開催日時がすでに明記されている。白頭山ツアー(7月29日、30日)、元山航空ショー(9月23日~25日)、氷祭り(12月31日)など、昨年8月に初開催された大同江ビール祭りは不評だったのか今年は開催されないようだ。
他のスポーツイベントとしては、ボウリング大会がプロ・アマ合わせて6回、卓球大会が2回、アイススケート大会が1回、過去に参加できたかは不明だが、第15回全国釣り愛好家競技などもあり、いずれも外国人も参加できるとしている。
さらに9月9日の建国記念日などの国家的な祝日には、広場で踊るダンスパーティがありこれにも外国人が参加できるとなっている。他にも料理体験会、民族衣装の展示会での試着体験と撮影会など今までの北朝鮮にはなかった同国らしからぬイベントも多数あるようだ。
北朝鮮のこの10年ほどの興味深い傾向として、核実験やミサイル発射実験などで国際的に孤立を深めていると言われるときほど、観光面の開放が進む点だ。周囲が騒げば騒ぐほど、自分たちの正当性をアピールするためにより外国人観光客を大切にし、今まで見せなかった場所や持ち込み禁止だったものを許可するなどして観光面での緩和を繰り返してきたからだ。
中には北京から24時間かけて平壌まで行く外国人も少なくない国際列車
「外からの外圧がかかればかかるほど内部的には外に敵ができるため求心力を高める絶好の機会となります。朝鮮儒教からの伝統で『受難と抵抗』という考え方があるのですが、北朝鮮の立場で言えば、私たちたちはアメリカを始めとする帝国主義勢力からの国家を消滅させようとする度重なる攻撃に一致団結して耐え抜いているとなります」(朝鮮半島研究家)
北朝鮮に対する経済制裁があまり効果がないように思われるのは、このように巧みに内政に利用しているからだ。今年は、国際的に強まる圧力をよそに観光面では大きな変化が起こる年になるかもしれない。
<取材・文・写真/中野鷹>