展示会で地域BWA高度化方式を紹介する阪神ケーブルエンジニアリング
日本各地で地域広帯域移動無線アクセス(以下、地域BWA)制度を利用した新方式=地域BWA高度化方式の導入事例が増えている。今回は地域BWA制度の動向を紹介する。
地域BWA高度化方式とはいったい何なのか? その前に、地域BWA制度から説明しよう。
地域BWA制度とは、無線通信サービスを公共サービス向上や情報格差是正を目的とした地域密着型の無線通信サービスのことだ。周波数は2.5GHz帯の20MHz幅が割り当てられ、提供区域は1市町村の全部または一部、1都道府県の一部のように地域限定となる。免許取得の要件には自治体との連携が追加されているのが特徴だ。
総務省は2014年10月に地域BWA制度を改正し、地域BWAで高度化方式の導入が可能となった。従来は通信方式としてモバイルWiMAXを採用したが、高度化方式ではAXGPまたはWiMAX R2.1AEの導入が認められる。モバイルWiMAXから地域BWA高度化方式への転用、地域BWA高度化方式から新規参入など、日本各地で地域BWA高度化方式の導入事例が増加している。
地域BWA高度化方式の無線局免許は2017年3月までに日本全国で15社以上の地域事業者が取得した。数ある地域事業者のうちAXGPを導入した阪神ケーブルエンジニアリング(HCE)は展示会などで地域BWA高度化方式の展示を積極的に出展しており、ケーブルテレビテクノフェア in Kansai 2017では阪急阪神ホールディングスの一員として阪神電気鉄道と共同出展して地域BWA高度化方式を紹介していた。
地域BWA高度化方式は従来方式より利点が多い。AXGPやWiMAX R2.1AEは国際的に広く採用されるTD-LTEと高い互換性を有する。HCEは世界標準のTD-LTEと表現しており、TD-LTEと同じと考えて差し支えない。周波数の合致など諸条件はあるが、TD-LTEに対応した端末を利用可能で端末調達が容易となる。
また、地域BWAの周波数は上側と下側ともに全国BWAの周波数と隣接する。上側はKDDI傘下のUQコミュニケーションズがWiMAX R2.1AE、下側はソフトバンクグループ傘下のWireless City PlanningがAXGPを運用し、いずれも地域BWA高度化方式と共通の通信方式である。モバイルWiMAXは全国BWAの周波数との間に干渉防止のためガードバンドが必要だが、地域BWA高度化方式は全国事業者と調整して同期を確保すればガードバンドを省けるため、地域BWAの周波数をフルに使えるのだ。
そして、大幅な高速化も実現できる。通信速度はモバイルWiMAXが下り最大15.4Mbpsとなるが、地域BWA高度化方式は基地局と端末側で4本ずつのアンテナを利用して通信する4×4 MIMOを適用すれば下り最大220Mbpsに達する。