イオンとセブンアイの6年間から見えてきた「被災地版スクラップ&ビルド」戦略
東日本大震災の被災地におけるイオングループとセブンアイの動向を比較すると、イオングループではショッピングセンター、セブンアイではコンビニエンスストアと、それぞれの得意分野を軸とした、異なった形態の「商業復興による被災地支援」をおこなっていることが分かる。
一方で、両社に共通する戦略として挙げられるのが、街の復旧段階では移動販売や仮設店舗による営業を行い、のちにそれらのサービスを引き継ぐ形で本設の店舗を出店しているということだ。
こうした手法は岩手県沿岸部の地場大手スーパー「マイヤ」も行っており、2011年に陸前高田市に出店した仮設店舗「マイヤ滝の里店」を2014年末で閉店し、隣接地に本設店舗「マイヤ竹駒店」を出店させている。
岩手県陸前高田市で営業する地場スーパー・マイヤ竹駒店は、仮設店舗「マイヤ滝の里店」からの本設昇格店舗。 かつてマイヤは陸前高田市中心部でショッピングセンターを運営していたが、津波で全壊し閉店した
このように、被災直後に多く見られた移動販売店舗や仮設店舗の開設は、災害直後における「被災地特有のニーズ」を満たす働きを担ったとともに、移動販売や仮設店で新たな顧客となった被災者を「本設店舗」へと誘導し、従前より大きなスケールメリットを獲得することで、自らも被災企業となった流通企業自身の「商業復興」を後押しするという狙いも大きかったと考えられる。
流通業界の2大グループ・イオンとセブンアイが推し進めた商業復興による被災地支援。その裏には、いわば「被災地版スクラップアンドビルド」とも言える、両社自身の復興に向けたしたたかな出店戦略が存在していたのだった。
参考:
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イオン株式会社、「東日本大震災 イオングループ半年間の取り組みについて」、2011.9.9(ニュースリリース)
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河北新報、「広野帰町者 17年春8割の見通し」、2016.09.14
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セブンイレブンジャパン、「セブンイレブン初の移動販売者が始動」、2011.4.13(ニュースリリース)
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株式会社イトーヨーカ堂、「富岡町内初!『イトーヨーカドーあんしんお届け便』」、2016.09.21(ニュースリリース)
【都市商業研究所】
若手研究者で作る「商業」と「まちづくり」の研究団体。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitterアカウントは「
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※都商研ニュースでは、今回の記事のほかにも下記のような記事を掲載中
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