さらに、旅行を企画するツァー・オペレーターもこの様な損害請求の負担は旅行者が宿泊したホテル側が一切負担するというのが基本的な条件にしている。ツァー・オペレーターは旅行者からホテル宿泊費などの旅行費用の支払を受けた後に、そのような不祥事が発生すると、ホテル側への宿泊代金の支払いからこのクレームで発生した損害賠償額を差し引てホテル側に支払うという決まりになっているのである。即ち、ホテル側では旅行者のクレームが偽りであっても、一旦ツァー・オペレーターがそのクレームを了承すると、ホテル側では必然的にその損害費用を負担せざを得ない立場に置かれているのである。
例えば、保険会社AXAは、契約した旅行者の中で2012年は100人当たりクレームをつけて来る旅行者は0.95人であったのが、2016年には1.6人に急増しているという報告をしている。(参照:『
ABC』)
しかも、クレームをつける旅行者が払い戻しを受ける金額に比較して、それを代行する悪徳弁護士はその10倍の金額を稼いでいるというのである。勿論、その請求総額はホテルが負担することになっている。それ故に、これを上手いビジネスと見た悪徳弁護士は旅行者にクレームをつけるように故意に煽っているというのも事実としてあるそうだ。
本件で詐欺の事実が認められた場合、スペインの刑法に照らせば、400ユーロ(46000円)以上の詐欺となり、禁固6か月から3年の刑罰が処せられることになっている。(『
ABC』)。
<文/白石和幸 photo by
cascalheira via pixabay(CC0 Public Domain)>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。